番外編 お兄ちゃん大好き俱楽部

《海未視点の話です》


「はい、頑張ります。今日は金曜日、最後の日ですが色々チャージしたので頑張れます」

 兄さんの教室は西の塔の2階、私の教室は東の塔の1階。

 名残惜しいですけど、ここで兄さんとはお別れです、寂しいですがサヨナラして、私は自分の教室の向かいます。


 ……けど、星占いさんは嘘つきでした、黒いあれこれ付けましたけどあまり意味なかったです。手つなぎたかったですけど無理でした、星占いさんはケチです。


 でも、兄さんと学校行けたし、朝も色々できたし、昨日も……えへへ、総合的に見れば完璧にプラスですね、やっぱり。私はすごく嬉しいです、兄さん。


 このおかげで今日も学校、乗り切れそうです。


「ん~、海未、相変わらずもちもちだけど、今日なんだかいつもよりお肌つやつやしてない? 髪の毛もなんだかきれいじゃない? 表情も楽しそうだし……何かいいことあったでしょ? 何か楽しいことがあったんでしょ?」

 総合的にプラスな楽しい気持ちで教室の自分の席に座ると、友達の東野麻衣子ひがしのまいこが元気な小麦色の肌と短い髪をフリフリして、私のほっぺをもちもちつつきながらそう聞いてくる。


 もう、くすぐったいですよ、麻衣子……でもでも、良いことがあったと気づくのは流石です、流石私の友達です。

「待って、当てさせて。何があったか、この私が当ててあげましょう。うむうむ、その表情を見るに……ズバリ! 海未は今日、お兄さんと何かいいことがあったのでしょう!」

 ビシッと私の方を指さす。

 お、正解です、すごいですよ麻衣子。


「ふふ~ん、これくらい造作もないことだよ! だって私たちは『お兄ちゃん大好き倶楽部』のメンバーなんだから! これくらい当てるのは当然のことだよ!」

 デデーンと私と変わらないくらいの薄い胸を張って、自慢げに鼻を鳴らす。


 お兄ちゃん大好き俱楽部―私と麻衣子、それにあともう一人の友達で構成された学校非公認の私たち3人のクラブだ。

 別に何か具体的な活動しているわけではないし、ルールがあるとかでもない。


 ただお兄さんの事が大好きな3人で集まって、ゲームしたり、ドラマ見たりアニメ見たり、お菓子作ってそれぞれのお兄さんにプレゼントしたり……そう言った怠惰で楽しい活動をしているクラブだ……要するにお遊びで言ってるだけのグループです、仲良し3人組みたいな感じです。

 共通点はみんなそれぞれのお兄さんが好きな事。


「それでそれで! 何があったの、海未は! そんな嬉しそう、ってことはお兄さんとすっごくいいことあったんでしょ! 私にも参考にさせて、昨日も今日も冷たくしちゃったから! お願い海未ちゃん先生! 何があったか、どうしたか教えてください!」

 ぺぺーんと机を叩きながら、ぐいぐい頭を下げて麻衣子が聞いてくる。

 麻衣子はお兄さんの事大好きだけど、ツンデレというか、好き避けというかで上手くお兄さんと話せずにベッドで悶々する日々が続いているらしい。


 うむ、これは私と兄さんであった事を言って、麻衣子も導かないといけないですね、同じクラブのメンバーとして、親友の一人として。


「まず、昨日兄さんが彼女と別れました」


「え、それは……えっと……喜べばいいのか、ごめんなさいすればいいのか……」


「大丈夫です、良いことです。あの女は兄さんの事、昔……いえ、この話は今することじゃないですね、次行きますね」

 この話は兄さんに直接思い出してもらいます、正直に思い出してもらう案件ですから。今はまだ言えないです。


「う、うん……ちょっと気になるけど、聞かせて」

 ちょっと麻衣子を驚かせてしまったのは申し訳ないけど、続きを話しましょうか。


「はい……続きまして、昨日は兄さんの大好きなチキン南蛮を作ってあげました。栄養バランスも考えて、完璧な献立を用意しました」


「すごい、愛情じゃん!」


「はい、愛情です。それで兄さんはそれを全部美味しい美味しいと言って食べてくれました。ご飯をおかわりして、いっぱい食べてくれました」


「愛情届いてんじゃん! 純愛じゃん、両想いじゃん、ラブラブじゃん!」


「はい、しっかり届きました、両想いかはまだわかりませんが間違いなく純愛です。その後、夜遅くに兄さんの部屋に行きました」


「夜遅くに部屋行くとかえっちじゃん! 海未がえっちじゃん!」


「いや、断じてえっちではないです、普通です。そしてそのままギュッと腰に抱き着きました。兄さんに甘えることが出来ました。兄さんの体、海未と違って大きくて、すごく……えへへ。兄さんのおっきな手で、頭も撫でて貰いました……兄さんに包まれてるみたいですごく幸せでした……にへへ」


「腰に抱き着くとか、頭撫でて貰うとか、しかも海未そんな蕩けた顔して……やっぱりえっちじゃん! 絶対えっちじゃん!!! ラブラブえっちじゃん!!!」


「だからえっちじゃないです、普通です、純愛兄妹です。そして、今朝も手を……」


「ああ、もういい、もういい! もうお腹いっぱいだよ、海未とお兄さんラブラブえっちすぎだよ……そんなラブラブいけません困ります!」

 私の言葉を遮って、真っ赤な顔になった麻衣子がパタパタと顔を冷やすように手を大きく振る。


 確かに私と兄さんはここまででもしっかりラブラブですが、朝のお散歩が一番ラブラブしていたのでそこを聞いてほしいです。絶対にこれが一番ラブラブしてますから。


 兄さんと手を繋いで、朝の街を二人で……ふふっ、やっぱりすごくイケないことしてるように思うです、すごくすごいです。



「……ふふふっ、相変わらずお兄さんが大好きなのね、海未ちゃんは。それだけ好きだとお兄さんも嬉しいだろうね」

 真っ赤になった麻衣子の回復を待っていると隣の席の美少女透ちゃん―白鷺透しらさぎとおるがニコニコ笑顔で私に声をかけてきてくれた。


 その名前の通りに雪のように真っ白で美しい髪と透き通るようなキレイな肌の女の子。目の色も大空のような青で本当にキレイ。

 スタイルも良くてすごく羨ましいです。

 お兄さんの元カノのあの女と双璧をなす美少女とか言われている人……私に言わせれば透ちゃんの方は200倍も2000倍も可愛いし美しいと思うんですけど。


「はい、私は兄さんの事好きですから……透ちゃんはお兄さんいるんでしたっけ?」


「ううん、私はいないよ。でも弟がいる、一個下の可愛い弟が……だから海未ちゃんの気持ちもわかるんだ。私も弟の恭ちゃんの事大好きだから!」

 うっとりしたような表情で、そう言う透ちゃん。


 その顔可愛すぎますよ、男子が結構見てますよ、見られてますよ透ちゃん。


「えへへ、ごめんね、ありがと……あ、そうだ! 私もお兄ちゃん大好き俱楽部入れてよ! 私の場合は弟が好きなんだけど、英語にしちゃえばどっちもbrotherだし! どうですか、新規メンバー募集とかしてませんか? 私もみんなとお菓子作ったり、映画見たりドラマ見たりしたいんだけど……どうかな?」

 キラキラと目を輝かせながら、私にそう聞いてくる。


 ……このクラブ、そんな規定とかないですから、自由ですよ。

 リーダーとか決めてませんけど、勝手に加入をOKしてもいいでしょう。


「はい、ぜひ入ってください。透ちゃんならみんな歓迎します。みんなでいっぱい、目いっぱい遊びましょう」


「やった! みんなでいっぱい遊ぶぞ……でもでも、肝心のお兄ちゃんとか弟と一緒にいる時間も大事に! 弟とかお兄ちゃんとかとラブラブしながら、みんなで遊ぶぞ! おー!!!」


「ふふっ、そうですね。みんなで楽しく行きましょう。おーーー!」

 楽しそうに手を振り上げる透ちゃんと一緒に私も手をビシッと天にかかげた。


 ……そして、麻衣子はまだ復活に時間かかりそうですか?




 ☆


「ふぇぇ、海未はすごいなぁ、ラブラブ羨ましい。そしてしーちゃんよろしくね……あ、志保が来た! おーい、志保、こっちこっち!」

 顔を真っ赤にほてほてにしていた麻衣子が登校してきた最後のメンバー、高輪志保たかなわしほに向かったブルブルと手を振る。

 麻衣子は透ちゃんの事をしーちゃんと呼びます、あだ名は少し羨ましいです。


「おはよ、麻衣子ちゃん、海未ちゃん、それにさーちゃんも。何かあったの?」

 不思議そうな顔でキョトンと長い黒髪の小さな首を傾げる志保。

 志保は透ちゃんの事をさーちゃんと呼びます。あだ名は(以下略)


 元の3人は身長体重スリーサイズは同じくらいのミニチュア可愛い軍団、でもさっき透ちゃんが入ったので平均身長もスリーサイズも少し大きくなりました、透ちゃん万歳です。


「ちょっと聞いてよ、志保。海未がね、昨日お兄さんとラブラブ楽しかった、って……色々ラブラブして楽しかったって言ってるの!」

 麻衣子の言葉に私も大きく首を縦に振る。


 昨日今日と私と兄さんはラブラブですから、明日は梓さんとラブラブかもしれませんが……今日も海未と兄さんはラブラブする日です!


 今日の手つなぎお散歩の事はやっぱり言わないでおきましょう。

 私と兄さんだけの秘密の思い出にしましょう……えへへ、響きがステキです。


「へー、そうなんだ、やるじゃん海未ちゃん! でもでも私も昨日、お兄ちゃんとラブラブしたよ! ラブラブ度合いでは負けないからね!」

 自信満々に胸を張りながら、そう言う志保。


 ほーほー、何をしたのでしょうか、志保は。

 私に勝ろうとは少し気になるですね、何をしたんでしょうか。


 麻衣子と透ちゃんも気になったのか、くいっと耳を傾ける。

「ふふっ、実はね、私は昨日……」


『昨日……?』


「なんと5回もお兄ちゃんとシちゃいました!!! まだお腹の中に変だけど気持ちい感覚残ってます!!! ベッドで5回もお兄ちゃんに求められて一回はナマで……きゃっ、改めて言うと恥ずかしいかも!!!」


「……え?」

 きゃっ、と顔を赤らめる志保の可愛い動きとは裏腹の生ナマしい言葉に私たち三人の思考が固まる。そして顔が熱くなるのを感じる。


 ……というか二人とも真っ赤な顔でぶくぶくしてます、大変です。


 ……え、えっと、シちゃったて、何をしたんでしょうか?

 かかかカードゲームとかですかね、そうですよね? きっとそうですよね?


「違うよ、海未ちゃんもわかってるでしょ? 私とお兄ちゃんは愛し合ってますから……ベッドの上のお兄ちゃんすごく紳士的で優しくて、ホント大好きです。それにお兄さんのあそこもすごく太くて、大き……」


「ああ、ストップです、ストップです志保。それ以上は言ってはいけないです、ダメな奴です」

 うっとりした表情で何かを言おうとする志保を止める。

 何を言うつもりだったんですか、大きいですか、すごく興奮する匂いとかですか、気持ちいいとかですか? ここ朝の学校ですよ、志保さん!


「……なんで? 私とお兄ちゃんの仲良しの証で、それに愛し合ってる……」


「何でもです、ダメなんです、志保。それに見てください、麻衣子と透ちゃんが気絶しそうです、真っ赤な顔でぶくぶくしてます」


「あ、ホントだ! だ、大丈夫、二人とも!? ど、どうしよう、保健室かな? どうすればいいかな?」

 蟹さんみたいにぶくぶくしている二人を見て、さっきまでの甘い表情から打って変わって、あわあわと慌てた表情で私の方を見てくる。


 まあ、この二人は下ネタ耐性がないだけなので多分すぐ治ると思いますが……しかし志保は凄まじいです、お兄さんと進み過ぎです、5回はやばいです、というより色々やばいです。


 私も兄さんといずれそんな関係に……いやいやいやダメダメです、私たち兄妹です。そんな兄さん、私の事……ダメです、ダメです、兄さん! やっぱり兄妹でそう言うのは、ダメだと、いや、でも……ぴやっ!?


「ちょっと、海未ちゃんどうすればいいの? どうしたら治るかな?」


「……え? あ、ほっとけば治ると思いますよ、多分」


「本当に!? ねえ本当に治るの、ほっといて!?」


 うう、兄さんとそう言う関係になるのは梓さんとかの役割です。

 梓さんがえっち当番で、私はお料理とか……いやでも……うう、わかりません、わかりませんです。

 兄さんとの関係は難しいです。




『……ううっ、志保ちゃんすごすぎ』


「あ、本当に戻った! ほっといたらもどってくれた!!!」



 ★★★

 たまに番外編は書きます、倫理感とかは捨てました。

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