第17話 冒険者ランク
「というわけで、レイ君はEランクからスタートよ!」
「わーい!ありがとう!これでもっと強い奴と戦えるー!」
「……ほどほどにね。」
ということでレイスはEランクから冒険者を始めることが決まった。
どうしてこうなったかというと。
***
「リア!次はあなたとレイとの試合よ!」
「(がくがくがくぶるぶるぶる)」
「リア!」
「へ!?わ、私!?」
「そりゃそうでしょ。元Cランクのあなたしか試験できる人ここにいないでしょう?」
「そ、そりゃそうだけど……。私勝てる気しないんだけど……。」
「え?あなた対人特化で、ここ最近負けなしじゃなかった?」
「じゃあ全力でやりましょうか。」
「ひっ!何でもう火球60球出してるのよ!?というかあれが最大じゃなかったの!?」
「さあやりましょう。」
「い、いやああああ!」
「俺、死ななくてよかった……。」
***
直系1mの火球を60球所せましと並べてまるで太陽のようにして戦意を折ったのだった。
「とりあえず、冒険者の説明諸々していくからよく聞いとくのよ。」
「はーい!」
「戦闘しているときのあの真面目な顔はどこ行ったのよ……?」
戦闘中と普段の顔の違いにまたも少し恐怖するリアであった。
「まず冒険者ランクについて説明していくわね。大きく分けて冒険者は4段階に分かれるの。G~Eが初級、D・Cが中級、B・Aが上級、Sが超級と呼ばれるわ。呼ばれ方が分かれているのは理由があってね、上の級に行くために試験が課されるの。例えばEからDに上がるためには護衛依頼を一つ完遂しなければいけないとかね。ちなみに冒険者間ではA~Gのランクで呼び合うのが一般的で、市井では級で呼ぶのが一般的だから覚えておいてね。」
どうやらある程度大きな店になると、冒険者の級によって値段を変えているらしい。初級は一般人と同じで、中級は1割引き、上級は2割引き、超級は3割引きとなるらしい。
「でも、級が上がれば上がるほどお金も溜まっていくよね?それだったら高くしていった方がいいんじゃないの?」
「ああ、確かにそういう考えもあるわね。でも、強い冒険者がいるっていうのはね、町の安全に繋がるの。実際強い冒険者が多いところは、犯罪の数もモンスターの数も少ないの。だから、そんな彼らを他の町にとられないように安くしてるのよ。それにお金が溜まればそこの土地や家を買って永住してもらいやすくなる。まあそんなところよ。」
これでも国がわざわざ法律を作ったおかげでマシになったらしい。昔は超級全額無料なんてこともあったとか。
「話を戻すわね。冒険者になると注意しなければならないことがあるの。といってもたった3つだけだからすぐ覚えられるわ。
一つ目が冒険者は一般市民に比べて罰が重くなるということ。これはまあレイ君には一生関係ないと思うわ。
二つ目が、冒険者として活動する際はギルド証を常に携帯しておくこと。確認の時に持っていないことが2度判明すれば、ギルド証取り消しになるから注意してね。
三つ目は1年に1回確認試験を受けること。確認試験って言うのはね、自分がその冒険者ランクに合った実力を有しているか確認するための試験のことよ。ギルド側が指定した同ランクの冒険者に認めてもらえば合格よ。」
「なるほど。つまり、1年に1回は同ランクの最強格の人と戦えるってことだね!」
「……うん。まあ、そういうことね。」
どれだけ戦いたいんだと呆れた顔をするカミラ。対照的にレイスの顔は大変晴れやかな顔をしていた。
「それからギルド証ね。ギルド証は級によって色が分かれているの。初級が銅、中級が銀、上級が金、超級が白金っていう感じね。最後に依頼の受け方だけど、あそこにあるクエストボードと呼ばれるところから依頼の紙を取ってきて私のような受付嬢に渡すの。それで受付嬢の許可が出たら依頼が開始できるの。……ここまでで何か質問ある?」
とりあえず一通りの説明は終わったらしいので、気になった点を聞いていくことにするレイス。
「冒険者同士の模擬戦のような戦いは自由にしていいの?」
「いいわよ。むしろ私としては大推奨よ!モンスターと戦うとなったら命の危機にさらされるからね。それよりかは安全な模擬戦をしてもらった方が私も安心ってものよ。」
「うん、わかった!じゃあ次の質問何だけど、もし『大変だ!』……うん?」
次の質問に移ろうとした時、冒険者ギルドのあの嫌な音が鳴る両開きの扉を勢いよく開けてこの国の兵士がギルド内に入ってくる。
「ど、どうされたんですか?」
一番近くにいたリアが飛び込んできた兵士に話しかける。
「南門に向かって外の森からモンスターが押し寄せてきています!数は約100!至急冒険者の皆さんのお力をお貸しください!もちろん騎士の方にもすでに応援を呼びかけています!」
この国には戦える人間は3種類いる。兵士、騎士、冒険者の3種類だ。兵士と騎士の違いは、土地を貰っているかとその強さだ。もちろん土地を貰っていて強いのが騎士だ。
そして、門で見張りをしているのは兵士。彼もそのうちの一人で、兵士では対処できないと判断し、騎士と冒険者に協力を求めたのだった。
「ねえカミラお姉ちゃん。俺もすでに冒険者だから行ってもいいんだよね?」
「え?だ、ダメよ!まだどれくらいの強さのモンスターかもわかっていないし、高ランク帯の冒険者は皆今ダンジョンに行っているから少ないの!そんな危険な場所に一人で行かせられないわ!」
レイスのことを必死で心配するカミラ。だがしかし、レイスの目には闘争心がめらめらと宿っていた。
「じゃあ僕がその強さを確認してくるよ。もし僕の火球がかなわなかったら帰ってくるからさ!」
それを聞いて少しだけ考え込むカミラ。レイスを行かせるのは個人的には絶対に反対なカミラ。しかし、Bランク以上の冒険者がいない今、正確に強さを図れる人間はレイスを除いて他にいない。個人の感情を優先させるか、ギルド場としての仕事を優先させるか。
「いえ、そうじゃないわね。……いいわレイ君。行ってきてもらえるかしら?ただし、必ず生きて帰ってくることが条件よ。」
カミラはレイスの意思を優先させた。その選択はたまたま受付嬢としての選択と重なっていたが、そんなことは副次的な産物でしかない。カミラはもうすでに決めているのだ。レイスを幸せにすること、それは何をおいても優先順位が高いのだ。
「分かったよカミラお姉ちゃん。ほどほどに頑張ってくるね。」
「ええ。ほどほどにね。」
微笑みながらそう言ったカミラは、両開きの扉から出ていくレイスを見送るのだった。
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