第14話 人生の選択肢②

「はあ。レイスがどれだけ戦いたいかは分かったわ。それで質問の方に戻るけど、その3つを満たすのは、やっぱり冒険者ギルド関連の2つね。でも、やりようによっては3つ目も同時にできるかもね。」


「一つ目が冒険者になること、三つ目が学校に行くこと、四つ目が冒険者の見習いになることだったよね。学校に行くことを同時にできるってのはどういうこと?」


「午後5時までは学校に行って、終わったら冒険者ギルドでお金を稼ぐということよ。そうなった場合、体力的に物凄くしんどいし、4つ目の選択肢は選べなくなるわ。」


 それを聞いて少しだけ考えるレイス。だが、レイスの中ではもうほとんど決まっていた。


「ギルドの使用人になるより、冒険者になるほうが強いやつと戦えますよね?」


 少し的外れな質問をしたレイスの発言に少しぽかんとした後、その意図を理解し少し、いやかなり呆れるカミラ。


「……はああ。っとに、どこまで戦闘狂なのよ。……ええそうよ。でもね、私はレイスに学校に入ってほしいの。だから、冒険者になるなら学校には絶対入って。それから依頼に関してはすべて私に任せてもらうわよ。」


 カミラはレイスのことをかなり心配していた。強い敵とばかり戦い早めに命をなくしてしまうのではないかと。それなら冒険者としての時間を少しでも減らせるように学校に行かせ、無謀な敵に挑まないよう自分が依頼を斡旋しようと考えたのだ。


 たとえレイスの人生の選択を強制したことで、レイスに恨まれようともここは譲る気はなかった。


「……うん、分かったよ。でも、そうなるとお金が……。」


「だーかーら、学校の費用は私が出すって言っているでしょう。レイスは大人しく私に甘えとけばいいの、よっ!」


 レイスの額を軽くデコピンしながら微笑みかけるカミラ。


「うーん。じゃあ僕が大人になったらちゃんと返すからね。」


「分かったわ。楽しみにしとくわね!……となれば、早速冒険者ギルドに行こっか。あ、その前にレイスのことレイ君って呼んでもいい?」


「別にいいけど、どうして?」


「本当の名前と被っているのそこだけでしょう?もし名前が変わっても呼び方が変わらないようにしようと思って。」


「うん、ありがとう。僕はお姉ちゃんのことなんて呼べばいい?」


「そうね、カミラお姉ちゃんかお姉ちゃんのどっちかがいいかな。」


「わかった!カミラお姉ちゃん!」




***

「提案。自治都市ドミナスの制圧ニ強化モンスター100、【スクリク】持ちモンスター10、進軍開始しますか?」


 レイスが捨てられた森の中で、背後に110体ものモンスターを従えた黒づくめで背の低めの人間が一人、何もない場所に向かって一人ぼそぼそと話しかける。

 しかし、その人の声は誰にも聞こえていなかったわけではなく、ここから遠く離れた場所にいる一人の男性には聞こえていた。


「許可する。ただし20分後だ。」


 背の低めの人間の提案を許可する男。


「了承。開始ハ20分後。南ノ門から攻撃。」


 今から20分後に始まる自治都市襲撃事件。多大な被害を出すことになるこの事件が動き出したことを知るものは、この2人ともう1人のみ。


「Good Luck!」




***

「はい着いたー!ここが冒険者ギルドよ!」


「早すぎない?」


 部屋を出て、階段を下りて1階に行き、街を2分ほど歩いて着いた場所が冒険者ギルド。あまりの近さに少し街並みを楽しむ時間を期待していたレイスは、少しがっかりしていた。


「そりゃそうよ。だって私の住んでるところギルド宿舎だし。ま、そんなことはさておき、早速中へ入りましょう!」


 そういって両開きの扉をギィーと少し嫌な音を鳴らせながら開けて中へ入る。一応レイスがここに来るのは2回目なのだが、前回来たときは周りに目を向ける余裕がなかったので、実際中を見るのは初めてだったりする。


 冒険者ギルドの中は、入って目の前のところに受付があり、右手に解体所と書かれた看板がかかってある部屋が存在し、左手は酒場のようになっていた。

 上へと進む階段は関係者以外立ち入り禁止の看板が立っており、どうやら一般人は通れなくなっているようだ。

 また、昼前という微妙な時間だからか、冒険者の数は少なく、酒場にいる人間の数もそれほど多くない。


 そんな光景を物珍しそうに見ているレイスを見て、カミラは衣服を正しレイスのほうを向いて、満面の笑みを浮かべながら丁寧にお辞儀する。


「ようこそ冒険者ギルドへ!私たちはレイ君のことを心から歓迎するわ!」



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