ギルド合格試験

懺悔と目標

「…あれ」


いつの間にか、寝ていたらしい。

逆に曲がっていた体は寝ている間に元に戻っていたらしい。

どうせならその間に死んで仕舞えば良かったのに、とも考えたがそんな考えは忘れることにした。

託された命少女の元に向かいながら考える。


俺は本当に悪いのか?


だって、勝手に勘違いしたのはあいつの方だ。俺は悪くない。

それに、俺は殺すつもりじゃなかったじゃないか…。


じゃあ、俺に罪はないのか?


彼は彼以上に大切なものを守ろうとしてたんだ。ただ、それだけなんだ。

そんな大切なものを、俺は危険に晒したんだ。


彼は最後、俺に託したのか?


こんな俺に、その大切なものを託したのか?なら、なら…。


そんなことを考えていたら、彼女の元についていた。


「…“生き返れ”」

“MPが足りません 不足 29999999040MP”

「…これ、だな」


俺は当分の目標を定めた。

俺の代償HPは1につき100MPに変換される。今のMP量は


“MP 960/960”


俺は、罪なき者を殺してしまった。

その罪は、償いきれないけれど、せめて彼の無念だけでも。

そう思いながら彼女を装置ごとスキルにしまった。


“所持品が一定数を超えたことで便利機能「内容把握」が解除されました

内容把握 空間を二連タップすることで発動される。サブスキル「富豪の懐」に入ってるアイテムを閲覧できる”

「こう、か?」


虚空をチョンチョン、と何かに触るようにタップした。


“風神の贈り物 1

 武神の羽衣 1

 武神の下袴 1

 冷炎の双剣 各1→冷酷の剣1

        |

         →情炎の剣1

 少女アリス 1

 解析の培養液1

 薔薇 10

 小石 32

 水精霊の花 6

 木精霊の花 4

 列強の火山岩 100”


少女…アリス…。

きっと、俺がこのアリスを蘇らせる時が使命の全うする時なんだろう。

それまで、俺はこれを忘れてはいけない。




~クエストクリア 10分後に入り口に自動帰還します~

「さて、大方はわかったかな」


あの岩の先をしばらく探索してわかったことは、今までここに来た人たちが帰ってこなかったのは彼の「魂の移植」の実験に使われていたため命を落とした、ということだ。

…彼の行為が許されることじゃとてもない。

ただそう思ったとしても。僕のやったことも許されることではないと思い詰めてしまう。


「…戻るか」


なんか、一気に体と心が重くなった気がするな。

そう思いながら俺はジャニズムへとテレポートした。




「おお!帰ったか!」

「はい。帰ってきました」


帰って来て早々。ヴァルキリーさんとあった。

俺はなるべくこれまでにあったことを悟られないようにふるまった。


「それで…何があったんだ?」

「それが…」


殺した罪を隠して。俺はすべてを話した。


「…なるほど。なら、もうあそこは入っていいんだな?」

「はい。もう大丈夫です」

「わかった。そうやって伝えておこう」

「お願いします」


俺はそう言うと、速足でギルドに戻った。


「…ハイロ…」


そう呟いた声は、聞かなかったふりをして。




「…では、クエストの達成報酬です」


“獲得

・1000000G

・毒消し草 200

・強靭精神のイヤリング 1”

「…ありがとう、ございます」


狂いそうなほどうれしいはずのその報酬も。俺には全く響かなかった。


「…ハイロ、大丈夫…」

「ヴァルキリーさん。もし、ここに入れば。一人の時間は取れますか?」


俺は、急にそんな質問を投げかけた。


「あ、ああ…」

「…なら」


俺はもう、意思を固めていた。


「なら、死ぬ気で合格してやります」


目の奥は、きっと青い炎が揺らめいていた。

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