列強の森
コートに袖を通し。靴ひもを縛り。太刀を装備し。ポーションや便利アイテムを持つ。
うん。準備万端!
「ヴァルキリーさん。行ってくる」
「ああ。頑張ってな」
「“列強の森にテレポート!”」
数日前と同じような感じで体がひも状になっていった。
~列強の森 ランク☆☆☆☆☆~
「ここか…」
マンションなんか比にならない程の巨大樹の森に少し圧倒される。
“状態異常について
毒 10秒毎に最大HPの1%の毒ダメージを食らいます。毒状態は浄化魔法、または特定のアイテムで解除可能です。なお、ダメージは1以下にはなりません。
麻痺 身体筋力の数値が身体筋力の10%減少します。また、重症化していた場合10ダメージを10秒毎に食らいます。
眠気 身体魔力の数値が身体魔力の10%減少します。また重症化していた場合昏睡状態となり行動不能となる。
このダンジョンでは状態異常攻撃が非常に多いです。状態異常打消しのアイテムの持参を推奨します”
「状態異常か…」
最悪言論統制でどうにかなるかな…。
「あ、そうだ。あれ使ってみるか」
防具に付属していたスキルである血印を使うことにした。
幸い、どんな物理ダメージでも俺に聞くことはないので遠慮なく切り傷を付ける。
「いっ…」
ぼたぼたとなるほどではないがそれなりの出血をした。
血が流れれば流れるほどこの森の全貌が頭の中に入ってくる。
「…妙、だな」
高難易度という割には道が一本道すぎる。普通、中々ゴールまでたどり着けないように難しい道のりや仕掛けを仕掛けるはずだが…。
「罠も魔物も…何にもないじゃないか…」
ま、そんなこと言ってても仕方のないことなので
「…いくか」
勇敢な一歩を、俺は踏み出した。
「勇敢どころか敵も何にもいねぇ~…」
歩き始めて早半日。なんの成果も得られていない。
こ、このまま帰ったら「ちょーよゆー」って感じで帰ることに…。ああ…ギルド嬢に血筋を浮かべるヴァルキリーさんの顔が容易に想像できる…。
「…とにかく、帰るしかないよな…はあ…」
ギルド嬢さんごめんなさい、と思いながら帰っていると
ピコンと、マップに一瞬だけ赤い光が写った。
「…なるほど。あれか」
俺はその方向に足を進めた。
ガキっと先程までなかったトラップが俺の足に喰いかかってきた。
「うわっ!…と」
あぶねえ…もう少しで片足が消えるところだった…。
先程光が消えた方を捜してみると何やらデカい岩があった。
「これ通り抜け…うわっ!」
淡い期待で岩に触れてみるともたれかけた体はそのままいわ岩の中に倒れ込んだ。
「なっ…」
そこに広がっていた景色は
培養液のような緑色の液体に漬けられた無数の魔物、だけでなく。
「なんだ…この子…」
妙に大きな装置に入った一人の少女だった。
「なんでこんな…」
「おい!」
触れようとした瞬間、入口の方から大声で怒号がとんできた。
「お前…何かしたか?」
「あ…いえ…」
「…どうにしろ、これを見られた以上…生かして返せない」
どこからともなく、彼はいきなり双剣を取り出した。
「え?」
突然な戦闘に驚きを隠せないでいると
「すまない。悪く思うな」
そう言って。彼はいきなり飛び掛かってきた。
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