懸賞金
「なるほど…」
「案外悪い提案じゃねえと…」
「却下。断るよ」
強気にそう言う。
まあ、何もしなくても攫われるなんてことはないと思うけど…。
「なら、悪いけどそのねえちゃんはもらって…」
「“動くな”」
語句を強め、動きを止めた。
「なっ!う、動か…」
「さて。俺は面倒ごとが嫌いなんだ。これ以上何もしないってんならひどいことはしない。さっさとどっかかにいけ」
軽く脅すが、おびえる様子もなく彼は
「断るね」
と言った。
「…そうか。なら“ついてこい”」
「な、体が…!」
「あ、兄貴、なんかこいつ変ですよ!」
後ろでは何やら話しているがそれを無視して俺は街を進んだ。
門の前で
「貴様、この街にいたか?」
と質問されたが後ろにいたヴァルキリーさんを見て
「…いえ、なんでもありません」
としつこく何かを聞くことはなかった。その様子に俺含めた男共はポカンとした。
「ち、こんなところまで…一体」
スゥ―と息を大きく吸う。
俺のスキルは“どんな事象でも操れる”というものだ。つまり、俺の言ったことはなんでも現実になる。
こいつらはきっと他にも何かやっている。そのまま返すには危険すぎるので、少し怖い思いをさせることにした。
「“動物たちの大行進、カモン”!!!!!」
「は?」
俺の急な行動に素っ頓狂な声を出した彼に俺は一言。
「“動くな”」
と言った。
ドドドドドドドドド…と地鳴りのような足音が段々近づいてきた。
「な、なんだ…?何か嫌な予感が…」
「あ、兄貴あれ!」
子分が見る先には、クマ、うさぎ、鹿、その他もろもろの山の動物たちの大行進がこちらを目掛けて走ってきていた。
俺が言うのもなんだけどあれは…やりすぎだろ…。
「さ、ヴァルキリーさん。行きますか」
「あ…ああ」
「ま!ちょっと!悪かった!悪かったから助けてくれ!!!」
という言葉は無視して。とにかく犠牲にならないように離れた。
そして、町に戻る僕らの後ろで「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………」という断末魔が響いた。こっわ。
「運がいいな。お前」
「あ…ああ…大金…ああ…」
「懸賞金」と言われもらった金額は…
“所持金 300万G”
いやさっき食った飯で500Gしかかからなかったんだぞ?
そう考えると金銭感覚は日本と同じだって考えてもいいな。じゃなくて!
「えっと…いいんですか?」
「いいもなにも…最近あいつらは悪さして回ってたらしいしな。当然の量だと思うぞ」
懸賞金、稼ごう。
「…どうする?検定試験受けるか?」
「う~ん…」
この装備を試してから、がいいな…。
「あ、そうだ。ヴァルさん。この臨時クエスト受けてくれそうな人いませんかね…」
「どんなクエストだ?」
話の蚊帳の外な俺が聞く限りの内容はこうだ。
この町「ジャニズム」の外れにある「列強の森」に行った冒険者が不自然に帰ってこないのだという。適正レベルの冒険者を何人送っても調査結果が来ない、ということでギルドマスターから調査クエストを立てるように、とのことだった。
ただその噂はかなり広まっておりそのクエストが一向にクリアされなくて困っているらしい。
「わたしも行きたいのだが、他のクエストがたまっててな…」
…これで、試すか?
「ヴァルキリーさん」
「ん?なんだ?」
「そのクエスト、僕が行きます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます