13歳
1
「はぁ、今日も疲れた」
おっ、詩音が帰ってきた。
「ただいま、お兄ちゃん」
おかえり、詩音。
ジャージ姿の詩音は僕の前にちょこんと座る。前髪が汗で張り付き、ほんのり頬が赤いのが色っぽい。今日も部活を頑張ってきたようだな。
中学校に進学した詩音は、バレー部に入ったという。
それに伴い、長かった髪をばっさり切ってショートヘアになってしまった。いや、ショートの詩音も可愛いのだけれど、なんだか僕の知ってる詩音が少しずつ変わっていくのだと思うと、複雑な気分だ。
「ああ、疲れすぎてこのあと宿題なんてできないよー。お兄ちゃん、手伝ってくれないかなぁ……なんてね」
詩音のためならなんでもしてあげたいけれど、さすがにそれはできないな。
「お兄ちゃんは中学の時、何部だった?」
お兄ちゃんは野球部だったよ。
部活から帰ってへとへとの状態で、いつも詩音の遊び相手をしていたけれど、憶えているかなぁ……
2
冬も近づいてきた十一月の終わり頃。
「……」
最近、詩音の元気がない。
ずっと家にいるし、学校に行っていないのだろうか……?
3
漏れ聞いた母との会話から察するに、どうやら左手の傷のことでいじめられたらしい。
詩音をいじめるなんて許せない。
「お兄ちゃん」
詩音は僕のところに来ると、辛そうな顔を見せた。
ああ、かわいそうな詩音。
僕には陰から応援してあげることしかできない。
頑張れ、詩音。
4
詩音はまた学校に通うようになったが、部活はやめてしまったようだ。
左手には常にアームカバーを着用して傷を隠すようになった。
ごめん、ごめんよ。
詩音。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます