12歳

 1



「お兄ちゃん、来週から修学旅行があるんだぁ」


 詩音はにんまりとした笑顔を浮かべる。六年生になった詩音は、どこから見ても完璧な美少女へ成長した。


 今の時点で時間が止まってしまえば、いいのに。


「私と会えなくて寂しい?」


 詩音は小悪魔のようににやりと笑う。


 寂しいに決まってる。五年生の林間学校の時なんて、あまりの寂しさに詩音に会いに行ったくらいだ。まあ、詩音は気づかなかったけど。


「お兄ちゃんは修学旅行はどこに行ったのかな」


 お兄ちゃんは東京と京都に行ったなぁ。


 東と西の都はそれぞれの趣があって最高だったよ。


「どこに行くかってね、東京に行くんだよ」


 いいねぇ。東京タワーからの夜景は最高だよ。



 2



 詩音が修学旅行から帰ってきた。


「ただいま、お兄ちゃん」


 おかえり、詩音。


 修学旅行は楽しかったかな。


「お兄ちゃんにもお土産買ってきたよ。お兄ちゃん野球が好きってお母さんに聞いたから」


 詩音はジャ〇ットくんのぬいぐるみと東京ドームのロゴが入ったクッキーを取り出した。


 僕のためにわざわざ東京ドームでお土産を買ってくれたのか。


 可愛い奴め。


「あのね、夢の中にお兄ちゃんが出てきたよ」


 驚いた顔で詩音は言う。


「びっくりしたけど、嬉しい」


 それから詩音は修学旅行の思い出を語って聞かせてくれた。


「ふー、足痺れちゃった」


 詩音はそう言って立ち上がる。


 すらりと長い脚は、小学生のものとは思えないほど美しい。


 あの足にまたまたがってもらって、お馬さんごっこをしたいけれど、それはできない相談だよなぁ……





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