ケース4 かなめの事件ファイル

 【事件の概要】

 ・高橋家の長男(四歳)が屋内で行方不明となる。

 

 ・警察に捜索願を出すが発見されず心霊解決センターに相談。※¹

 

 ・現場を視察中に押入穏婆と呼ばれる妖怪が現れる。

 

 ・押入穏婆を追って押入れに潜入。

 

 ・穏婆に呪いの簪を突き刺し、先生が穏婆を追い払い和樹くんを無事に保護する。

 

 ※1、実際は高橋氏が五年前に出会った謎の人物から金銭を受け取り、霊障が起こる家を購入。その後先生に相談することまで計画されていた。

 

 

 【霊障の概要】 

 ・今回のケースでは忌地に建てられた家の押入が霊道になっていた。

 

 ・窓から見える景色の中に探頭殺※²があり、それがさらに霊障の頻度を高める要因になっていた。

 

 ・押入れ穏婆は捕らえた子供に若い女の肉を自らの眷属にする。

 

 ・押入れの霊道から穏婆の眷属(過去に攫われた子供? )が家屋に侵入し怪奇現象を引き起こした。

 

 ・押入穏婆は和樹くんに狙いを定め和樹くんを霊道に引き込んだ。

 

 ※2、探頭殺とは建物の奥から別の建物が覗き込むように存在する風水を指す。

 

 

 【解決方法】

 押入れ穏婆の棲む場所に霊道から逆に侵入し、穏婆に呪いの簪を刺すことで、先生を穏婆の棲家に誘導? し追い払った。

 

 

 

 【考察】

 ・怪奇現象の頻度と年数を考えると高橋家には穏婆の眷属が溢れていた可能性が高い。(それで先生はを避けながら歩いていた? )

 

 ・和樹くんと沙織さんの訴えをフミヤさんが無視したのは、五年前に契約した謎の人物の呪が原因と考えられる。

 

 ・謎の人物に先生は心当たりがある様子だが、情報の収集は困難。

 

 ・先生の過去に謎の人物が深く関与か!? (重要事項!! )

 

 

 【メモ】

 ・タバコは鋭すぎる霊感を緩和させるらしい。

 

 ・妖怪は概念の存在で祓えないらしい(何度でも蘇る? )

 

 ・妖怪を消滅させるにはその妖怪の存在自体が世間から完全に忘れ去られなければならないらしい。

 

 ・呪いの簪を女性が髪にさすと(刺すも含む)さした女性のもとに男の怨霊が現れて死ぬまで付き纏うらしい……

 


 

 

「ふぅ。出来た出来た」

 

 かなめはファイルを書き終わると、ふと卜部の背中の感触を思い出して耳が熱くなった。

 

「いかん……いかんぞかなめ。あれは粗相以外のナニモノでもない……」

 

 そんな独り言をブツブツつぶやきながら両手で顔や耳を冷ましているとふと物音が聞こえた気がした。

 

 

 ジャリっ……ジャリっ……

 

 

 椅子から飛び上がって壁を背にして、かなめはクローゼットの方をじっと見つめた。

 

 

 ドッ……ドッ……ドッ……ドッ……

 

 心臓が早鐘のように全身に血を送る。


 

 かなめは服の裾を固く握りしめてクローゼットに近付いていった。

 

 

「忌土地の邪気にあてられたせいだ」

 

 卜部の言葉が蘇った。

 

「妖怪に遭いやすくなってるんだ」

 

 卜部がニヤリと笑った顔が脳裏に浮かぶ。

 

「大丈夫だ。いずれ消える」

 

 そう言って頭の中の卜部は霧のようにいなくなった。

 

 

 

「大丈夫だ。もう消えたはずだ。気のせいだ。気を強く持て……」

 

 そう唱えながらかなめはクローゼットの取っ手に手をかけて一気にドアを開いた。

 

 

 

 

「若い女は此処かえぇえ?」

 

 

 そこには剥き出しのお歯黒で笑う押入穏婆の姿があった。

 

 

 かなめは絶叫しなが携帯を引っ掴んで部屋を飛び出し、卜部が居るであろう真夜中の事務所へと駆けていくのだった。

 

 

 

 

 

 高橋家の押入れ

 

 ーーー完ーーー

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