ケース4 高橋家の押入れ⑪
「な、何を馬鹿なことを!! そんなものは知らない!!」
フミヤは卜部に向かって叫んだ。
「本当だ!! 沙織!! 俺は何も知らない!!」
卜部は人指し指を立てて言った。
「まずは一本だ」
卜部が低くそうつぶやくとフミヤは激しい痛みに襲われた。
「痛ぅうううう……!!」
フミヤは腹を押さえて畳に突っ伏した。
「正直に言え。嘘は言わないと契約したはずだぞ??」
卜部は表情の無い無機質な声で静かに言った。
フミヤは脂汗を流しながら卜部を睨んだ。
「俺はそんな計画なんて知らない……」
「三本」
「ぐうううああああああ!! 分かった言う!! 言うからやめてくれ!!」
卜部はぞっとするような冷たい眼でフミヤを見下ろしていた。
かなめと沙織は息を飲んでその光景を見ていた。
かなめは卜部の見たことのないほど冷酷な瞳の色に思わず寒気がした。
「言え。誰がお前に計画を持ちかけた?」
「い、言いたいが、言えないんだ……本当だ嘘じゃない……」
フミヤは縋るように卜部を見上げて言葉を絞り出した。
卜部はそんなフミヤを見て鼻を鳴らした。
「ふん……最初から素直にそう言えばいいんだ。そいつに関する情報を言えないように縛りのある契約をしたんだろ?」
「な、なぜそれを……?」
「お前がそれを知る必要はない。話せる内容を全て話せ」
フミヤは観念したように経緯を話し始めた。
「五年前……沙織のお腹に和樹がいるとわかって、わた……」
私と言いかけたフミヤは頭を掻いて言い直した。
「俺はなんとか家を買いたいと思ったんだ……」
「でも、当時は貯金もなくて……そんな時だった」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「へぇー。君面白いね」
そいつは馴れ馴れしい感じで話しかけてきて自己紹介をした。
それから俺の顔を覗き込んでこう言ったんだ……
「お金に困ってる。っていうより、家を買うお金が無くて困ってるんだ?」
俺は度肝を抜かれたよ……会ったばかりの奴にそんなことを言い当てられたら誰だって驚くだろ?
そいつはしばらく俺を観察してから気味の悪い笑みを浮かべて言ったんだ。
「ねぇ。今から言う不動産屋に行ってある家を買ってくれるなら家の代金を出してあげるよ」
胡散臭いと思った。でもなぜか目が離せなくて、俺は条件はなんだ? って聞いたんだ。
そいつはクスクス笑って話し始めた。
「その家は古い忌土地に建っててね。おまけに霊道が出来かけてるんだ。君が家族とそこに住めば間違いなく霊道は繋がる……!!」
「そうしたらね、怪奇現象がやまほど起きるけど君は知らない分からないで通すんだ。そうすればいずれ君の子供が失踪する……」
そいつは何が可笑しいのか終始嬉しそうに喋ってた。
「子供が消えたら、この住所に出かけて行って卜部って霊媒師に子供を探すように依頼すればいい。子供はちゃんと見つかるし、何も悲劇は起こらない」
俺は嘘だと思ったが、どうしてもその話が気になって言ったんだ。前金ならいいぜって。
そしたらそいつはあっさり了解した。
「ああ。構わないよ。だけど君が嘘をついて違う家にすまないように縛りを憑けさせてもらう」
俺は言ってる意味がよく判らなかったがそれでいいと言ったんだ。
そいつはニコニコしながら握手を求めてきた。だから俺はその手を握った。そしたら手にナイフで刺されたみたいな痛みが走ったんだ。
「これで君の魂に縛りが憑いた。君は約束を破ったら罰を受けることになる」
「それと、他の誰にも僕の素性は明かしちゃ駄目だよ? 僕の容姿や名前なんかを誰かに喋れば君は死ぬよりも酷い目に遭う」
「これが代金だよ」
そいつは薄笑いを浮かべて分厚い茶封筒を差し出してきた。中にはちゃんと金が入ってた。
教えられた不動産屋で言われた住所を伝えたら、店の親父は怪訝な顔でこの家の資料を出してきた。
俺は不動産屋の親父に妻には曰く付きの家だという話はしないように口止めした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
フミヤはそこまで話すと大きなため息をついた。
沙織は軽蔑の眼差しでフミヤを見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます