第6話

「死んで別の世界に行った者達も、今の俺のようなじりじりした気持ちで苦しんでいるんでしょうか?」



「……それはわしにはわからんよ。

 わしはいつまでもこの世界に留まるしかないからの。


 それにしても、おまえさんが望まぬ身になって、たった独りで辛く苦しい思いをしていることは、気の毒じゃのう。

 しかし、わしにしてやれることは、可哀そうじゃが、何もないんじゃ」



 鷹はがっかりしましたが、月が自分のことを心配して心を痛めていることはわかりました。

 それで、かえって空元気を出して言いました。


「いえ、そんなことはありません。

 何もしてくれないなんてことはないのです。


 だって、こうして今、俺と話をしてくれているじゃないですか。

 俺の話を聞いてくれているじゃないですか。


 それだけで、俺は今、どんなに慰めていられるかわかりません」


「そうか、それはよかった。

 

 ……それならこれから、わしの光が少しでもこの部屋に射している晩や、カーテン越しにでも明るさが漂っている夜は、時折やってくるから、わしと話をしてみるかい?」


「本当ですか!」


「ああ、本当じゃよ。また来るよ。

 ほほう、何やら、元気が出たようじゃないか」


「ええ、だって、俺、今、とても嬉しいんだ」


「ははは、それはよかったの。

 では、今日はもう遅いから、これでおやすみ」


「おやすみなさい」




 次に月が来てくれるまでの間に、鷹は何から話そうか考えました。

 あまり飛びたいのに飛べない辛さばかり訴えては、聞かされる方も同じように辛いだろうと思ったからです。

 せっかくわざわざ来てくれるのだから、楽しい話もしたいと、知恵を絞りました。

 月が、「来てよかったな。また来てやりたいな」と思ってくれるように。


 それで、自分が自由だったころ、どんなに飛ぶことが楽しかったかを話すことにしました。


 野山を自由に飛び廻っていた時のことを、鷹は丹念に思い出していきました。


 そんなある日、とうとう月が訪ねて来てくれたのです。




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