第23話焼肉を食うぞ
あああ、どうしてしまったんだ。
いくら力試しでも、これはやり過ぎだ。
こんなにオークを狩って、大量に解体された肉を荷馬車に積んで来るなんて・・・
しかも1台の荷馬車ならまだしも、2台目の荷馬車の肉は大型冷蔵庫にも入り切れないぞ。
「サラス隊長、この大量の肉をどうするつもりだ」
「わたしはよかれと思って狩って来たのです。街で食べる肉は、帝国から仕入れた干し肉ばかりで不味くて食えませんよ」
「え!そうなのか、領民は文句も言わずに食べているぞ。俺は食べないが・・・なんか、かたそうだし」
「そこなんです。我々はオークの肉が美味しい事を知ってます。なのに領民は昔からの掟のようなルールで魔物の肉を一切食べない、それは変だと思いませんか?」
「強制的に食わせろと言うのか?」
「前に作ってもらった、焼肉なる料理を目の前で作って食べるのを見せれば、かならず食いつくはずです」
昔からルールに縛られた領民に、そんなことで食べだすとは思わないがやってみるだけやるか・・・
サラス隊長は、新しい村で兵士たち参加の焼肉パーティーをするそうだ。
セバスと弟子も参加して、準備に取り掛かった。
レンガを積み上げて、その上には網を載せて、下には炭がしかれて火がつけられた。
そんな網焼きが、5つも用意された。
炭に火をつけるのは、火魔法のソアンが担当だ。
セバスは、作業台の上で黙々とオーク肉を器用に切っている。
切られた肉を、弟子が秘伝のタレに漬け込んで、ボールごと兵士に手渡した。
兵士もだまされて食って、大丈夫なのは知っているから平気だ。
焼いて食いだした。中にはレアな焼き加減で食う兵士もいる。
「このジューシーな焼き加減がうまいんだな」
「お前、食べるのが早いぞ。もっとしっかり焼けよ」
「いやいや、この焼き方がいいだよ」
焼かれた肉とタレの食欲をそそる匂いが充満して、その匂いに誘われるように村人が集まりだした。
「あんたも食うか、オークの肉だが美味しいぞ。はふふ、もぐもぐ、やっぱり焼肉はうまいなーー」
オークの肉と聞き驚いている。なんか汚いものをみるみたいに・・・
それでも去る村人は居ない。ただジートと兵士がうまそうに食う姿を見ていた。
「あんなにうまそうに食ってるぞ。ぽっくり死ぬようすも無いが・・・」
「忘れたのか、あのルールを・・・賢者さまは魔の森の物は、決して食べるなと・・・」
「しかし、この匂いはたまらんぞ。腹が急に食いたいと言って、『ぐーぐー』いってるんだ」
俺は村人たちの前に出て、大事な話をした。
「いいか、お前たちが食っている干し肉は、ブラックウルフの肉だと知っているか」
「え!!そんな話を信じろと言うのか・・・」まさかと戸惑った顔は、赤く興奮してた。
「俺は、お前たちの鑑定をしたはずだ。その鑑定にブラックウルフの肉と表示されているぞ。嘘だと思うならシモンに聞いてみろ。それになブラックウルフの肉は不味いから、帝国の人間は一切食わないぞ」
「シモン、嘘だよな、シモン」
「紛れも無くブラックウルフの肉だったよ。俺もショックだったよ。帝国の人間はワルだと知っているはずだ。そんな嘘も平気でつく奴らだ」
村人の何人かは、
「だまされた。ずーとそんな肉に金を払っていたのか・・・」
「すると賢者さまの教えが間違っていたのか?」
「間違っていたのではなく。分からなかったから安全を考えて決めたルールだと俺は思うぞ。みんなを大事に思っていたはずだ」
「そうかも知れませんね・・・安全の為だったと・・・」
それからは、村人は食って食って食いまくった。
子供も食べて、腹一杯でスヤスヤと寝る子もいる。
中には秘蔵の酒を持ち出して、酒を飲み交わしながら焼肉を食べていた。
「こんなにうまい肉は、初めてだ。それにこのタレが絶品だ」
そうなのだ。
このタレは遠くの国から輸入されたタレを、魔眼でレシピを盗み取って完成させたものだ。
その中の醤油が曲者だ。
なんとか貿易商人から製造方法を聞きだした。
作れないと高を
蒸した大豆と
この種麹も、運ばれた
それを塩と水と一緒に大樽いれて、
後は
塩にいたっては、錬金術で海水から取り出したものだ。
塩は味にも風味があって、領民にも好評だった。
その醤油におろし
生姜も大蒜もごまも、魔の森に自生していたものだ。
大蒜とごまは、帝国には自生しない植物だったのがありがたい。
だから、これからはこっちから売る事も視野にいれている。
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