第22話大盾とマナ循環
魔術士だけが強くなり過ぎた気がする。
これでは、軍としてのパワーバランスが悪すぎる。
「サラス隊長、例の物を武器庫から取って来てくれないか」
「分かりました、2、3人付いて来い」
運ばれたのは大型の盾だ。
この盾には錬金術が色々と施されていて、そのせいで大きく両手でないと扱えない。
しかしそれ程の能力を備えて、頼もしい物になっているはずだ。
「いいか、この盾は錬金術が施された優れた武器だ」
「そんなバカな、あれは盾だ」
そんな
「皆が思うのも無理はないな~。サラス隊長、皆にどれだけの物かみせてやってくれ」
サラス「全員注目だ。あの的に攻撃を仕掛けるからよくみておけーー」
言い終わると、的に向かって凄い勢いで突進。
「ドンガン」と音がして、的を吹き飛ばしていた。
的は後方の壁にぶつかって「コロン、コロン、コロン」とむなしく転がっている。
兵士たちは「え!なんで」
「あれって人間の動きじゃないぜ」
「俺は何が起きたか見えなかったよ」
「皆、静かにしろ。この盾の裏にはボタンが幾つもあって、色々出来るようになっている。今のは、1番のボタンだ。このボタンを押して5秒後に、盾の両サイドから風が高速で吹き出る仕掛けだ。気合を入れて握って身をまかせろ。そうでないと大怪我をするからな」
中には、置いてあった大盾を触ろうとする者まで現れた。
「バカ野郎!!勝手に触るな!説明が終わってから触れ。2番目のボタンがこうだ」
それは突然に盾の中央から、円すいの棘が50センチ程も飛び出していた。
もしもこの棘を出したまま、1番のボタンを押せば大変な事になると想像してしまう程だ。
「3番目のボタンは、攻撃魔法を防御出来る優れものだ。試しにドベルト、火球を放ってみろ」
「いいのですか・・・どうなっても知りませんよ」
ドベルトが呼ばれると、周りの魔術士も気になって見ていた。
ドベルトも大怪我をさせたくないので、小さい火球を発生させて放った。
盾に当たった瞬間、中央の穴に吸い込まれていた。
「なんで俺の火球が・・・いくら小さいからって・・・そんなバカな」
「ドベルト、俺に代われ。俺の本気の雷撃には敵わないはずだ」
ありったけの雷撃を放ったが、火球と同じように吸い込まれた。
雷撃の方が一瞬の出来事で何があったのか分からない程だ。
「サンもやってみろよ」
「なぜ私がしなければならない。お前らと同じ運命なのは分かり切っている」
「お前は、のりが悪いぜ・・・しかしこうも呆気なく無効にされるとは思いもしなかったぜ」
「・・・・・・」
「分かったか・・・どれだけ良い武器だと認識したか」
「はい、確認できました」
「この魔石をはめ込んで、ロックすれば作動するから気を付けろよ。このはめ込みが安全装置の代わりだ」
兵士たちは、おもいおもいの大盾を持って試しだした。
「ウワーー、引張られるーー」と叫ぶ者や色々だ。
早くも的を吹飛ばす奴までも現れた。
そうなると不思議に同じように吹飛ばす者が現れた。
「ヨーシ、全員注目だ。それなりにマスターしたから、次の段階にゆくぞ。今から教えるのは遠い国で使われている技だ」
皆は、興味があるのか俺の顔に注目して、ジッと見てくる。
あまり注目されずに過ごしたせいか、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「魔術士が魔法を使うには、体内のマナを使って大気のマナを上手く使う事が出来るからだ。一般人にもマナはある。しかしマナの扱いは非情にも才能で左右される。しかし体内に循環させて魔法のような効果を発揮する技を教えよう」
更に目をキラキラさせて、こっちを見ているぞ。
そんなに真剣に見ないで欲しい・・・
「イメージは、体内のマナを感じる事から始めるぞ。まずは楽に地面に座って体内のマナを感じろ」
1人が座りだすと全員が座り、中には
俺は1人の後ろに座って、背中に手をそえた。
「今から体内の一部が温かく感じるからな、それがマナだ」
ピクンッと肩が動き「あ!感じる。これがマナなのか・・・」
そんな事を全員にさせて、強引に感じさせた。
そうでもしなければ中々感じないのが、このマナなのだ。
普通にやれば1年間は必要で、これがメジャーな方法になっている。
それに対して魔術士は、恩恵を受けた瞬間から感じて魔法が使える。
ただし普段から魔法に接して、そんなものかと知識として知らないと使えない事がわかった。
「感じたら体中にマナを巡らせろ。頭のてっぺんから手足の先まで循環させるのだ。すると体の動きや力がパワーアップするはずだ。それがこの技の効果だ」
これもやらしてみたが、ぜんぜん2時間経っても成功したと言う者は居なかった。
俺は諦めて、同じように触って、強引に巡らせる手助けをしてやった。
すると簡単に成功して、飛跳ねる奴や走り回る奴が続出。
ああ、そんなに飛んで何がしたいのか・・・急にパワーアップして喜ぶのもいいが・・・
俺の周りには誰もいなぞ。
あんなに騒いでいたのに、ちょっと目を離したスキに誰もいない。
横にいたサラス隊長さえも知らない間に、姿を消している。
行き先は決まっている。魔の森へ行って魔物と戦っているに違いない。
あの大盾を持って・・・
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