第21話攻撃魔法と防御魔法
ここしばらくは、兵士たちの訓練も見る事がなかった。
あまりにも忙しいからと、暇があれば読んでない本を読んでいたからだ。
セバスに、それではいけませんと小言を言われてきてみた。
兵士の熟練度も気になるが、恩恵を受けた魔術士もどんなに成長したか見たい。
きっと凄い魔法を使えるようになっているはずだ。
期待を膨らませて見てみたが、なんじゃこれは・・・とがっかりだ。
初級の魔法、それも1つだけだ。
普通の初級の魔法なら5つぐらいはあると聞いている。
手元の本にも、そのように書かれている。
それなのに1つだけの攻撃魔法を、ひたすら的に当て続けている。
「カイ、これはどうなっている。他の魔法の練習をしないで・・・変だぞ」
「え!他の魔法ってなんですか・・・」
しまった。こいつらには魔法の知識がそもそも無かったんだ。
洞窟の落盤があってから、鑑定士を招いたと聞いてないし、攻撃系の恩恵なしが長年続いていたのを忘れていた。
俺自身が帝国の常識のまま、うっかりし過ぎたのが悪かった。
「カイが日頃から使っている
「え!そんなこと聞いてませんよ・・・」
もう涙目で訴えてきた。
「すまん、すまん。知っているものだと勘違いしていた。
カイは手をかざしてイメージを浮かべていた。
小さな斬撃が発生しては消えて、又小さな斬撃が発生しって、その繰り返しが永遠に続いている。
俺の魔眼が、ハッキリと原因を見ていた。
「カイ、小さく1つだけをイメージをしているから、次の斬撃をイメージした途端に魔力が拡散してしまっているぞ。それじゃダメだ。始めから複数を作るイメージが大切なんだ。それを繰り返せば放つのも簡単だ」
「分かりました。やってみます」
お!一発目から5つも発生している。それが勢いよく放たれた。
的には3つが命中。俺が教え上手なのか・・・
それを見ていた他の魔術士が「わたしにも教えて下さい」と集まった。
「皆も、カイと同じように複数を発生させる練習からだ。それが出来たら次の魔法も教えるぞ」
パッと自分の位置に戻って、練習を再開している。
始めから成功する者も居た。中々、センスがいい奴だ。
「嘘だ。お前、もう出来るのか・・・」
「えへへへ、才能だな」
「ヨシ、負けるもんか、俺は8つも発生させてやる」
2時間ぐらい経っただろう。
なんとか全員がマスターしたようだ。
「今度は、防御魔法をマスターしろ。攻撃だけだとスキをつかれたら良くて相打ちだ。それもすぐに防御出来るように練習しろ。まずは風魔法は、風を高速に回して丸い盾のようにするんだ。カイ、やってみろ」
始めは竜巻のように、大きくなって周りからあらゆる物まで巻き込んでいる。
「その竜巻を圧縮して平べったくして、そうだ圧縮してるぞ。もう少しだ」
見事に圧縮された風の盾が完成。
これなら物理攻撃は弾き返すだろう。
ただし雷撃は無効に出来ない。全ての魔法にも不向きはあるから仕方ないか・・・
「カイを見てたな、あんな感じてやってみろ」
「あの・・・わたしはどうすれば良いですか?」
「ああ、君か、上級にバリアがあるが、今の君には無理そうだ。雷の盾ってないから放電でなんとかなるだろう」
「放電・・・ですか」
「カミナリを目標に放つのでなく、前面や全体に放て、複数の兵た矢ならどうにかなるだろう。
ちょっと複雑な顔をしながら「分かりました」
どうにかなって欲しいな・・・
そして、訓練を見ていてある事の気付いた。
風と火て相性が良くないか・・・
2人で協力して放てば、初級でも中級の魔法になる可能性は大いにありうる話だ。
そんな事を試したと帝国時代でも無いが、試す価値はある。
「カイとソアン、2人で協力して、風魔法と火魔法を合わせて放てないか? 互いに交じり合うイメージでやってみろ」
「え!そんなことが可能ですか・・・やるだけやりますが、失敗しても文句は言わないで下さいよ。ソアン、やるぞ」
「本当にやるの・・・」
火球がどんどん膨らんで、慌てたソアンが放った。
「バカ、まだ完成してないだろう」
しかし、的も壁も燃やし尽くしていた。
メラメラと燃えたが1分後に自然に消えた。
あんなに頑丈に作った的だったのに。
「見ろよ、壁は溶けてただれているぞーー」
「凄い魔法だぞ」
ならば、水魔法と雷魔法ならどうなるのか・・・
俺は両名に「やってみろ」と指示した。
サンとジンは互いに相手の顔を見て、
空中に槍水が出来上がると、知らない間にカミナリがまとわりついていた。
そして放たれた。
大爆発と同時に大音量の爆発音がした。あたりは土煙が舞って視界がゼロだ。
土煙がおさまると的も壁も崩壊して無かった。
あ~あまた、シレン・ベーに怒られるぞ。
もう予想はしたが、この威力なら魔法銃を集中して撃ち出すより断然いい。
着弾時の交じり合いより、撃つ前に融合した方が威力を増すのか・・・
もっと検討する余地がありそうだ。
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