第20話薬草栽培




ロレン・ヘードから薬学所前の出来事を、色々な報告として聞いてしまった。

まあ、もっともな話だと納得してしまった。

更に作っておいた上級ポーション120本を、薬学所へ急いで送ったからすぐに対応するだろう。


念の為に上級ポーションをもっと作るか・・・

常温なら1月間は持つ上級ポーション。魔冷蔵庫なら1年間も消費期間が延びるはずだ。



この魔冷蔵庫も錬金術でしか作ることが出来ないレア物だ。

帝国では、1の親族の錬金術士が宰相に大金を手渡して、秘匿ひとくした技術だ。

その秘匿した魔冷蔵庫は、飛ぶように売れたヒット商品だ。


貴族やレストランには、大型魔冷蔵庫を売り付けて大儲けしている。

その大型魔冷蔵庫では、冷凍機能が付いていた。

氷が簡単に手に入って、超便利な魔道具としても有名だった。


しかし俺の魔眼に掛かれば、手に取るように内容は丸分かりだ。

なのでここに来た時には、ちょちょっと簡単に作った。

帝国より効果は優れていると俺は思っている。




早速、ポーション作りに取り掛かろう。

大鍋にポーションの材料を、計量しながら投入。

錬金術を施せばが中級ポーションはすぐに出来上がった。


俺が作った魔冷蔵庫から、ドラゴンの血の瓶を慎重に取り出した。

俺の魔眼で、品質劣化はしていないことを確認。



その血を1滴、2滴、3滴、4滴で、急に色が変わって輝いた。

あれ・・・変だな。

俺の錬金術が更にレベルアップしたのか・・・

前回は5滴なのに・・・

作る効率でも上がったのか、まあ少ない量で出来たらそれに越したことはないか・・・


出来上がった上級ポーションを瓶に詰めて、魔冷蔵庫に保管だ。

これで当分は大丈夫かな、それにしても薬草が少なくなってきた。


冒険者ギルドにそろそろ薬草取りでも注文するか、初心者の冒険者なら近場からでも簡単に取って来るだろう。

それか薬草の栽培でも考えようか、それだそれがいい。




俺は農耕担当のシノーを呼んだ。


ドアをガバッと開いて、シノーが入るなり「なんですかーー」と大声が響いた。

そうなのだ、コイツは行動力はあって声も昔から大きくうるさかった。


「シノー、何度も言ったよな。俺が居る部屋に入る時は、ノックをしろって」


「えへへへ・・・」笑ってごまかした。昔からの癖だ。


「お前を呼んだのは、薬草の栽培が出来ないかだ。どうなんだ」


「出来ない事もないですよ。リアン・ポーがいるから楽に栽培が出来ますよ」


「それなら栽培を任せるからやってくれ」


「分かり・・・」


ああ~あ、最後の言葉を言い終わる前に、ドアも閉めずに出ていっているぞ。

仕方ない奴だ。





1週間もすれば、新しい農耕地で薬草がすくすくと成長しているらしい。

その薬草を、俺は見てみたいと思った。

だから穀物の視察のついでに来てみた。


「後1週間もすれば、ここの薬草も収穫が出来そうです」


恥ずかしながらリアン・ポーが言うのだから間違いは無さそうだ。

それにしてもここからでも、シノーの声が聞こえていた。

あんなに遠くにいるシノーの声が・・・


「シノーの声に悩まされてないか」


「大丈夫です、もう慣れました。それにシノーさんはいい方です。尊敬もしてます」


ほう、珍しい。シノーをほめるのは俺だけかと思っていた。


「それと品薄の毒系の植物も栽培してます。薬学所から要請があったので・・・」


「そうなのか、見てみたいな」


「案内します。毒なので遠く離れた所で栽培してます」




なんと立派な柵でおおわれていた畑があった。

それに鍵も掛けていた。


リアンがその鍵を開けて、柵を開いた。


「どうぞ、お入り下さい」


「あ!あれはヨミアミ草か・・・栽培は大変だったろ。毒薬図鑑でも栽培方法は載ってなかったはずだ」


「なんとなく出来てしまいました」


なんとなくなのか・・・素晴らしい才能だ。


「それとアガラの実の事も聞きました。実物をもらってみたら、それに反応する草を見つけたました。1メートルと反応する範囲は短いですが、緑の葉っぱが赤く反応します」


「それは本当か・・・その草を常に近くに置いておけば、飲み物に入った毒にも反応するのか・・・」


「はい、液状にして薄めても、反応速度は変わらずに反応しました」


リアンは、大発見をしたことにまったく気付いてない。

皇帝や貴族がもっとも恐れる毒なのに・・・


「そうか、でかした・・・そうだな何か褒美ほうびをやるぞ。なにか欲しい物はないか、金でもいいぞ」


「お言葉に甘えて大きな望みがあります。小さくていいので家が欲しいです。わたしは借家なので・・・そして狭いので」


「分かった。場所は何処がいい。新しい村なら豪邸を建てる事も出来るぞ」


「そんな滅相めっそうもありません。家族が暮らせる家であればなんでも構いません」


「セバスに話しておくから心配するな」


なんか顔の表情がパッと明るくなったリアンだった。

なんでも手違いで、1人部屋に親と妹の3人で暮らしていた。

まあ手違いってある時はあるんだ。

なにもクレームを言って来ないので分からず仕舞いだった。


担当者は後で注意されていたが・・・



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