第24話会合




城の会議室には、各部門の代表が集まって、ひそひそと話合っていた。

俺が入った瞬間に、ピタリッと静まり返った。

俺が皆の顔を見ながら確認した。皆が揃うのもひさしぶりだ。



兵隊からはサラス隊長。

農業からはシノー担当官とリアン・ポーの2名。

土木隊からはロベルト隊長とシレン・ベーの2名。

薬学所からはアシラン担当官とビアン・ヘードの2名。

鍛冶隊からはベアン隊長。

領土会計からはセバス。



「シレン・ベーです。土木隊で土魔法を使って建物を一生懸命に建てています。なので壊さないで下さいね」


「わたしはビアン・ヘードです。薬学所で回復魔法で傷を治すのが仕事です。今は魔法の熟練度を早く上げれるように頑張ってます」


ここで初めて出会う者が、軽く自己紹介をして雰囲気的には良い感じでなごんでいる。



「色々あったが、なにか問題はなか? 問題があったら皆で知恵を出し合って解決していきたいと思っている。どんどん意見を言ってくれ」


セバス「それでは、最初の問題として発言をさせてもらいます。領内でのあきないが頻繁ひんぱんに行なわれるようになって金が不足してます。帝国の金自体が元々から少なかったからです。このままだと商いがとどこおる恐れがあります」


「ならば領内だけの通貨を作ればいいのだな。金、銀、銅で通貨を鍛冶隊で作れないか?」


ベアン「作れますが、帝国と同じデザインで作るのですか?」


「それをすると偽造になってしまう。違うデザインで作ってくれ。デザインは任せる。それとセバスは金と銀をベアンに渡す手はずをしてくれ」


セバス「かしこまりました。この件は解決できてセバスは感謝してます」


「よせって、ここは会議の場だし、それにこの問題は領主の問題でもある。こっちが感謝する方だよ」


セバスと俺の関係だが、それを余り知らない人間には知られたくないのも本音だ。

言葉の節々ふしぶしで、子供扱いされているように聞こえてしまう。




サラス「それでは私の方の問題を話したと思います。ここの兵士は120人でしたが、シンさまが新たに450人を雇い入れました。その為に570人まで膨れ上がってます。街の兵舎も老朽化して、本来は300人用の兵舎なので建て替えて欲しいと思っています」


セバス「それでしたら、城に新たな兵舎を建てて街の兵舎も建て替えればよろしいかと、街の兵舎の土地も隣接する家を壊す以外、拡大する事は不可能です。小さな土地で訓練するのも大変でしょう」


「そうだな、城の兵舎を新たに建てよう。1000人規模の兵舎にして欲しい。街も治安維持の為に必要だから建て替える事を許す。アルタ隊長、それでかまわないか?」


ロベルト「はい、なんとかします」


ロベルトの部下のシレンは、思わずため息をついて、俺の方を見ていた。

その分、給金を増して与えることを考えた。あの目は、催促の目だと俺は思っている。



アシラン「あのー、冒険者ギルドから上級ポーションの携帯を許して欲しいと言われているのですが・・・」


「それは許可できないな。上級ポーションを帝国に知れるリスクは絶対にダメだ。そもそも携帯させて使ったと嘘をつかれて、帝国に密かに売られた場合、俺の立場はどうなる。下手をすれば帝国に連行される恐れもあるのだぞ。今は抵抗する力はまだ無いのだ。領民を信じたいが今は絶対にダメだ」


セバス「それでしたら兵士の同行をさせるのは、どうでしょうか。冒険者の戦いを間近に見れて為になるでしょう。兵士にはローラン領の置かれている立場も理解して、色々と秘密にするように教育も施してます。なので帝国に売るような事はしないでしょう。それに冒険者と出かけた時は冒険者に危険手当を払わせましょう。上級ポーションの本来の値段を考えれば安いので・・・どうでしょうか」


「その辺はセバスとアシランとギルドで話し合ってくれ。その後の話の内容しだいで決めたい」


サバス「分かりました。アシラン、それでいいな」


アシラン「はい、それでお願いします」





ギルドの建物内で会合がなされて、ああだこうだと意見が出揃った。

結果的には、ギルドも俺たちが話し合った取り決めに、しぶしぶ合意した。

ギルド長と副ギルドの判断だ。


それは書状に書き留められて、サインも書かれたものがギルド内に貼られた。


人だかりが書状の周りにできていた。


「なになに、危険手当か・・・こっちがもらいたいが・・・仕方ないのか・・・」


「それもそうだな」


「知り合いの兵士なら、一緒に戦ってくれるかな」


人それぞれの意見もあったが、まあまあだ。

1日の賃金としては高いが、冒険者も命が大事だ。

それにクレームを言ってくるかと思ったが、クレームらしいことはなかった。


それに上級ポーションの価格自体が安いことは、皆も承知の事実だった。

そんなに安く設定してくれる領主に、文句はないのが現状だ。

それに帝国にばれたら大変だと、誰もが理解している。


それだけ帝国にしいたげられた人々だった。




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