第15話ギラーウルフと黒狼




魔の森深くで、ギラーウルフが生息する森へと踏み込んでいた。

ギラーウルフは、猛毒を体臭として発しった魔物だ。

その臭いを嗅いだ瞬間に死ぬ程の猛毒で、自分自身が死んだことも分からない。


なので冒険者は立ち入らない森だった。


森自体が紫色に染まった森で、誰もが見た途端に逃げ出していた。

森の植物も同じように毒を含んでいた。




そんな森に黒騎士50人を引き連れて来ていた。


俺自身も特別なスーツを着込んでいた。頭も体も全体が囲まれた物だ。

一体型のゴム製のスーツだ。


ゴムも魔の森で発見されたものだ。


そのスーツで周りの空気を遮断して、1人の黒騎士が空気を詰め込んだタンクを担いでいた。

俺はそのタンクからチューブで空気を吸って、どうにかこの毒の森で生きていた。


特別な魔法陣でタンクの空気を、俺のスーツに循環させる仕組みになている。

ここに立ち入る為だけに作った物だ。




周りの空気が薄い紫色に濁っていた。視界も見えにくいが動くウルフは見えた。


「黒騎士、ギラーウルフだ。やっつけろ」


声も響かないのに、ついつい声に出して命令してしまう。

それでも念話として伝わっているみたいだ。


もう周りはギラーウルフによって囲まれていた。

ちょっとやばいかも・・・


しかし黒騎士は動じない。


動いた途端に、ギラーウルフの首をねていた。

それが合図のように戦いが始まった。



俺の頼もしいミラーは、俺のそばで守っていた。

ミラーを飛び越えて、俺に飛び付くギラーウルフは、ミラーによって真っ二つにされていた。

目の前の二つになったギラーウルフに死霊術を施した。


肉体だった体から、骨だけがふらふらと立ち上がり、徐々に骨同士がくっ付きだした。

牛並みの大きさの骨だけのギラーウルフが完成していた。

心臓部には、魔石が紫色に光っていた。



殺して間もない魔物は、魔石を抱え込んでアンデットになってしまう。

メリットは、死んだ時の強さを継続することだ。

マナやマソを吸収して、早く強くなるすべも持ち合わせていた。

それに魔物や人間を殺して、生気を吸取って更に強くなれる。


デメリットは、魔石が弱点になってしまう。



それに引き換え、黒騎士は弱点はない。

あるのは、俺の存在だ。俺が死ねば黒騎士も存在することが出来ない。



そのアンデットとなったギラーウルフは、駆け出した。

そして大ジャンプしてギラーウルフの首にみ付いた。

一噛みで頭部が引き千切られていた。

その瞬間に骨が淡く光っている。レベルアップしたようだ。


黒魔法使いが火の球を連続で発射して、ギラーウルフを燃やし尽くした。


「魔法使い!魔法を使うな。骨が必要なんだ」


魔法使いは、仕方なく後方へ下がった。


更に戦闘が続いた。


俺が振り向くと、最後のギラーウルフが黒騎士によって頭部ごと槍でつらぬいていた。

死んだギラーウルフは、槍先でだらしなく垂れていた。

引き抜いた途端に、地面へ「ドサッ」と落ちた。


200以上いたギラーウルフは、全滅だ。

俺は魔眼で選別して、120体を死霊術でアンデットとして蘇らせた。



ようやく今回の目的が達成された。


黒騎士の騎乗する乗り物の確保だ。

残りの魔石は回収。生えていた毒の植物も回収。

余り見ない猛毒草が手に入った。

この毒で何ができるのか、うきうき気分で毒の森を出た。




急に暗くなった。空を見上げると怪鳥だ。


その怪鳥が襲ってきた。

広げた翼は5メートルを超えている。


目的は俺だった。

しかしミラーのキルソードがキラリと舞った。

それは一瞬だ。

怪鳥の首をスパッと切り落としていた。


俺は切り落とされた頭を引きずって、胴体の首にそえるように置いた。


そして念じながら死霊術を試した。

結構な魔力を消費してしまった。

肉体から抜け出した、骨の怪鳥が目の前にいた。


「飛んでみろ」


羽が無くなっているのに飛べるのかと疑問がよぎった。

その心配は無用だった。骨の翼でも空中に浮いて飛び回っていた。




そんな怪鳥を連れて帰った。連れ帰った先は城だ。

建築隊が見事な城を、魔の森近くに建築した。

ここなら海から城が見えない。帝国にばれる恐れもないはずだ。


大部分はシレン・ベーが、頑丈な石で建設したようで、その分給金を増すことにした。

5階建ての城で、帝都の城に引けを取らない建築物だ。

その城の屋上部分に、アンデットの怪鳥が止まって大人しくしている。


ああ、怪鳥用の建物を建設する必要が出て来たな。

シレン・ベーに頼んで作ってもらおう。



城に隣接した兵舎には、黒騎士用に部屋があって皆は立ち並び待機中だ。

この兵舎に詰め込めば、2万の黒騎士が待機できる規模にしている。

アンデットのギラーウルフも大人しく兵舎で待機中だ。


そのウルフも黒騎士と同じように、黒い鎧を全身に装着させるべく、ウルフ用鎧を製作中だ。

ようやく1体の鎧が完成。全身が黒い鎧を着込んだウルフの出来上がりだ。

そうだ!こいつらを騎乗する黒狼こくろうと呼ぼう。


そして2日も費やして120体の鎧を作りきった。

口を大きく開くように工夫も凝らした。

爪による引っきも出来るように、間接部も自由に動けるようにしていた。


試しに丸太を相手に攻撃させてみた。黒狼は飛び付き鋭い爪で引っ掻いた。

丸太には、深さ20センチの爪跡が残っていた。

更にみ付くと、一噛みで丸太をくだいていた。

まずまずの攻撃力で満足している。



そして、完成した城には、セバスと家臣の隊長クラスが住めるように大きな部屋が用意されている。

調理場では、セバスと弟子たちが料理に腕を振るっている。


内装部は建築隊が完璧に仕上げた。


俺は余りった装飾をするなと言ったのに、豪華な装飾があっちこっちに散りばめられていた。

それがドアであったり、窓枠であったりと色々だ。


俺の執務室には、豪華なテーブルがどんと置かれ。

椅子も豪華で、足部分まで植物や鳥が彫られて、豪華さをアピールしていた。

座り心地もクッションが効いていて抜群だ。


建築隊の腕の見せ所は、家具類だったので必要に凝っていた。



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