第14話恩恵と店




広場で6日も費やしてて、1万人以上を鑑定したのに・・・

恩恵を受けたのは10人だけだった。

それでもステータスで、才能のある者は兵士に雇った。

訓練さえすれば強くなれる。

特にここの住人は、それだけの基礎があった。


兵士に向かないが器用な人には、新たな職業を作って雇った。

才能があっても金が無いのが、今の現状だ。

それに右も左も分からない職業だとなお更だ。

1から始めるのは、到底無理な話になる。

だから俺が育てないと、いつまで待っても産業は育たない。



手先が器用で美的感覚の鋭い人物は、宝飾品を作る職人グループにして宝飾店を作らせせる事にした。

もちろん店のオープン費用や運営費も、領主の俺が責任を持って支払う手はずだ。


洞窟から珍しい宝石が出ていた。

原石のまま帝国に売っても、安く買い叩かれるのは目に見えていた。

それが帝国のあくどい商売だ。


金や銀もそれなりの量が取れだした。

これを使って付加価値を与えるには、宝飾品がもっとも適した品だ。

この品々を帝国に売って、資金を手に入れようと俺は考えた。


今度来る帝国の貿易船の商人に、店を見せて商売を始めれば・・・なんとかなか・・・

嫌々足元をみられて安く買い叩かれるかも・・・

今度セバスに相談してみよう。



ここローランでは、自前で作って売る店は、1軒のパン屋だけだ。

小さな農耕地の野菜や穀物は、配給に近い扱いだった。

農業は微々たる物だった。だから見捨てられた土地だ。

しかし俺が激変に変えてやった。

今は少ないが野菜や穀物も右肩上がりに出荷が出来る予定だ。

もっともっと増えるだろう。



薬学所もそうだが、建築班の人員増員で土木隊に格上げして、土魔法を恩恵で受けたシレン・ベーも加わって城の建設に取り組んでいた。

今は城壁をああだこうだと建設中だ。


「シレン、ここに石柱をドドドと建ててくれ。中から階段で上がれる感じで頼むよ」


「え!・・・又そんな無茶な注文を付けるのですか・・・出来ない事は無いですが・・・」


シレンは、精神を集中すると手先が淡く光りだした。

すると石柱が「ズズズズゥ」とせり出してきた。


ロベルトは中を確認して「凄いな、見事に出来上がっているな」

そして、その階段を1つ1つ踏んで確認している。


「なんだか貧弱な階段に見えたが、案外丈夫な階段だな」


そして一気に駆け上った。


「凄い眺めだ。魔の森は広大だと聞いたが、本当だったんだ。シレンもあがって来いよ!!」




植物魔法のリアン・ポーは、農耕地で魔法を植物に掛けて実り多いものにしている。

そして食虫植物を使って、農耕地にやって来る害虫を食べさせていた。

今では、食虫植物に名前を付けてレベルアップをさせる程だ。


「ポーヤにポンも、さっさとあの害虫を食べなさい。1匹も残してはダメよ」


つるを伸ばして、先の粘着で捕まえると大きく開いた口の中へ入れて食っていた。

知らない者が見れば、魔物と間違われる程に育っていた。

飛んで来る害虫が10センチから30センチと大きさも様々だ。


そんな害虫を無数のつるで器用に捕獲して、退治している。

ここに入ってくる虫は、魔物になりかけの虫だ。

50センチで魔物と言っていいレベルで、魔石が体内に形成されるらしい。

昔の文献の受け売りだ。




雷魔法のセザン・リーカーは、冒険者になって魔物を討伐していた。


「セザン!大勢の魔物を連れて来たぜーー」


「後は俺様に任せておけ!食らいやがれーー雷撃!!」


一気に20体もいたブラックウルフを倒していた。

セザン・リーカーが加わったパーティーは、一気に冒険ギルドのトップクラスに名を連ねた。




水魔法のサン・ポーツ、風魔法のバン・ベッカー、雷魔法のジン・ボーン、火魔法のソアン・ギーの4人は兵士になった。


兵舎の訓練所で、カイ・ヘイモンドから魔法の発動に向けてレクチャーを受けていた。


「ダメだ。もっと精神を集中・・・そうそう良くなってきてるぞーー」


「先生、少し休憩をお願いします」


「じゃー20分の休憩だ」


そして再開されると、ちらほら攻撃魔法が成功している。

サン・ポーツの水槍すいそうは、的の石をつらぬいていた。

その音に驚き、訓練中の兵士が見に来るぐらいだ。




回復魔法の恩恵を受けた15歳の娘ビアン・ヘードは、ロレン・ヘードの娘だった。

ロレンはテストに合格して、晴れて薬学所で働く身だ。

その同じ薬学所で働きながら、患者に向かって回復魔法の訓練にはげんでいた。


「痛いですか? 回復魔法を掛けますから、じっとして下さいね」


淡く右足が光りだして、傷口がふさがりつつあった。

そして嘘のように傷跡もなくなっている。


付き添っていた母親が、何度も何度もお礼を言っている。

ポーションを買いに来ていた冒険者も驚きながら見ていた。




鍛冶班は人員が増えて鍛冶隊に昇格。

武器や防具製作をやっていたが、人員が増えたので大工の工具や調理器具なども作るようになった。

それらを扱う金物店も、大通りにオープンしている。


お客も頻繁に入っては、鍋や包丁を買っている。

価格も帝国から入る物よりも4割も安い値段で売っている。

それが本当の適正価格だった。

昔は、鍋や包丁やハンマーなど全てが注文でしか手に入らなかった。

それだけ、この領地が便利になっていた。




野菜や穀物も充分に収穫するようになって、1軒だったパン屋が新たにオープンしていた。

そしてレストランもオープンしている。

レストランの前には、入り切れなかった客が列をつくっている。


俺が帝都のレストランのレシピを教えたのが切っ掛けだった。

魔眼を手に入れて、追放の身になって懐が良くなった。

そのせいで帝都のレストランを食べ歩いた。

そして魔眼でレシピを完璧までに見る事が出来た。


セバスもその方面はプロ級だった。

そのせいで、セバスに弟子入りする者が多い。




木材も容易く手に入るので、家具を作る職人も育てた。

俺の配下のアシラン・ロールは、帝国の家具職人の息子だ。

その経験を活かして、職人たちを指導している。


家具を作る木材も500年以上も経った巨木だ。

魔の森で育った木だけに、木材として高品質であった。


そして、俺がデザインした家具が飛ぶように売れていた。


俺が住んでいた屋敷の家具は、全てが俺が骨董店から買ってきた家具だった。

そのせいで目利きには自身があった。


こっちに来るにあたり売り払ったが、腐食剤を塗ってきれいしてから売った。

ああだこうだと交渉して、価格は買った時の3倍になっていた。


なので、ここの職人にも腐食剤を使わせた。

腐食剤を塗って、木目がきれいに出ている。

まさに高級感をかもし出した。高級家具と言っても良かったかも知れない。



まさに大通りは活気に溢れていた。

人の往来が一杯で、俺が来た当時とは大違いだ。



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