第12話ポーションと毒消し




目の前には、たくさんな薬草や様々な毒消し草が山積みだった。

錬金術と鑑定された俺だ。錬金術としての本領発揮ほんりょうはっきをしてみるか・・・

早速、ポーションや解毒剤を作ろうと考えた。


農耕地の薬用の部屋で、薬草を錬金術で乾燥させて細かく粉砕ふんさいした物を100グラムに、1リットルの純水を混ぜ込みながら錬金術を施した。

この時の錬金術の施し方は、ポーションの品質に係わる程に微妙な塩梅だった。

緑色から赤くなった瞬間に、すぐに錬金術を止める必要があった。


それ以上に錬金術を施すと、赤紫に濁って低級ポーションに成り下がってしまう。

しかし、俺の魔眼で見れば錬金術量が簡単に判明して、中級ポーションが出来上がっていた。


これなら、深く切った傷や骨折程度ならすぐに治せるはずだ。


しかし、欠損部や神経が傷ついた体を回復する上級ポーションには、ドラゴンの血が必要だった。

Cクラスのドラゴンの血で作れるのだが、いにしえの時代に全滅したと伝わっていた。


しかし俺はこの魔の森に、Cクラスのドラゴンがまだ生存していると睨んでいた。



出来上がった1リットルの中級ポーションを、小瓶に注いでゆく。

出来上がった小瓶は20本。


帝国の錬金術師は、低級ポーションしか作れない。

錬金術量の施しがなっていないのが原因だ。しかしたまに中級が出来てしまう時があった。

その時は中級ポーションは、帝都の王宮へ献上される。


なので、この中級ポーションは、帝国で高値で売れそうな商品だ。

在庫はすでに1万本にもなっている。

俺が作った中級ポーションは、鑑定結果でも10年後から徐々に効果が落ちると鑑定結果が出ていた。

ポーション内に濁りが発生した瞬間から、効果を徐々に下げてしまう。




次は毒消しを作ろう。

毒には色々と種類があって、ドラゴンの血さえ有れば万能の毒消しが作れるのだが、無いので種類別の毒消しを作った。


神経毒にも2種類あった。

1つ目は神経を過敏に反応させて、神経が耐えられなくし止まる神経毒。

その結果、心臓をも止めてしまう。

魔物では、デッドスネークやデットアントが有名だ。


これには、神経の過敏な反応を低下させる効果の毒消しで、【アミシン】がある。

【アミシン】はアミア草とシンキ草を3対2の配合で搾り出した汁に錬金術を施す。

それは一瞬で【アミシン】へ変化するものだった。




もう1つの神経毒は、神経を麻痺させる神経毒だ。

痛覚も無くなり、体を動け無くする働きがある。

魔物では、キラースネークやキラータランチュラが有名。


この神経毒を緩和するのに【ヨミ魔水】が使われる。

【ヨミ魔水】は麻痺系に効果的な毒消しだ。

神経を回復させるヨミアミ草と、体全体に広げる魔水を1対1の配合のしたのが【ヨミ魔水】。




次には筋肉を硬直させる毒には、アガラの実が有名だ。

搾り汁は、無色無臭で無味で飲んでから1時間後に、効果を発揮して全ての筋肉を硬直させてしまう。それは心臓でも同じだ。

なので死んだ瞬間から、体が硬くなった状態はアガラによる毒殺だと判断された。


一般的によく毒殺に使われることがある。

飲んで30分以内なら、ユミノの葉を絞って飲めば心停止はしない。

しかし、症状が1時間後に出る為に助かり難い毒だった。


他にも色々とあるが、患者を見てどの毒に犯されたか判断するのが大変なのだ。

間違って投与すると、悪化を招いて死を早めるからだ。



なので、毒消しを作りながら、薬に詳しい人間の育成が必要だと考えるようになった。

この毒消しや毒は上手く使えば、病気予防や病気自体にも使えることが可能だった。

キラースネークの毒で、虫歯の治療に一般的に使われていた。

これを発展させれば、痛みを抑えられるだろう。


だから俺は薬学の学校が必要だと考えた。




しかし何故、薬学が一般化しないのは、癒しの神殿があるからだ。


癒しの神殿では、回復魔法を扱う者が多く居た。


神殿で施しをして、その見返りに病気や傷を治してもらうのが普通だった。


そして、病気は癒しの神殿の領域の為、錬金術士は病気には係わらないのが暗黙のルールだった。

しかし、ここにはそんな癒しの神殿は無い。

なので俺は薬学校を作ると事に決めた。




帝国では、錬金術士同士のおきてがあった。


錬金術の店に、1キロ以内には新たに店はオープン出来ない。

顧客こきゃくを奪うこともダメだ。

錬金術を使わなくても作れる薬の製法流出の禁止。

そんな様々な掟に、錬金術士はあぐらをかいて暮らしていた。



しかしここには、帝国から隔離された世界で俺しか居ない。

それに俺の領土だ。癒しの神殿も無いので、好き勝手にさせてもらう。

そう思った瞬間に部屋から飛び出した。

丁度、サラス隊長が居たので「サラス、来てくれ」



「お呼びでしょうか?」


「病気や傷を治す、薬を作る学校を作りたい。なので建築班に学校を建てさせて、生徒を集めてくれないか?」


「・・・分かりました。わたしなりに頑張ってやります」


そんな返事をしたサラス隊長は、行動が早かった。

建築班に学校建設を頼んで、街で公募ポスターを貼っている。

公募場所は、街の兵舎だった。


そしてポーション作りを手伝っていたロナルドに、薬学校の教師を任命した。

ロナルドには、王都から持って来た分厚い薬の本を握らせた。


「え!なんですか・・・・」


「ロナルド、後は任せたぞ」


戸惑っているロナルドは、INTが高いので何とかなるだろう。

そして俺の独学の薬ついて、ペンを走らせた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る