第7話兵士達の武器作成




俺は、1冊の本を持っていた。


そしに帝国図書館であらゆる本を読んで育った。

皇帝が俺の教育係を指名されないまま育ったせいで、セバスに読み書きを教えてもらい、本だけが俺の友達だった。

帝国貴族学校すら通えないまま、知識は本と下町に暮らす人々の知恵のみだった。

それ程に皇帝は、俺に無関心だった。


その帝国図書館で、追放された賢者を監視していた執行官の覚書があった。



【賢者について】

その一節に、賢者は気球船で空を飛び、ローラン領が帝国を凌ぐ領土だと言っている。

2度目の飛行に、私も同乗したが広大な土地が広がっていた。

しかし、ドラゴンを目撃したことですぐに引き返した。それいらい飛ぶことはなかった。

気球船は、プロペラで自由に空を飛びまわった。


帝都で使えば、すぐに帝都を襲うことも可能だろう。



賢者は、何日も部屋にこもり、20日後に部屋から出てきた。

その時の賢者の手には結晶が握られていた。

何でも魔物を寄せ付けない結界を張るらしい。

それ以来、魔物の襲撃も無くなったので、真実だとわたしも確信する。



俺は、【賢者について】を読んで、広大な土地で気ままに暮らしたいと思い描いた。

それが、現実になるなんて思いもよらなかった。

ローラン領の領主に決まってから、色々と計画を立てていた。

帝国から自律する、新たな国を作る積もりで俺は挑んでいる。

しかし、まだまだ帝国に知られる訳にはいかない。


帝国から自律する為にも軍隊が、どうしても必要だ。




倉庫に行くと、山積みになった木に、乾燥を施しておく。

これで、農耕地の建築が終われば、屋敷の改修が始まるだろう。



次は、兵士達の武器に取り掛かる。

手始めに、兵士達の武器の威力を増すことから始める。


剣や盾、槍なども帝国の一級品より優れた物を作る。

ここに来る前に、帝国の武器店を視て回った結果。だいたい武器の品質を理解して来た。


鉄の金属に触れただけで、イメージした剣が出来上がった。

そして、更に魔力を流し込んで剣の強度と切れ味を向上させてゆく。


出来上がった剣で、丸太を切ってみた。「スパン」と抵抗もなく切れていた。



取りあえず120人分の剣を作り終えた。

どれも、錬金術で作られた物だが、鑑定結果も名品と言っても過言でない出来栄えだ。


盾も作った。頭を守るヘルムや体を守る胸当ても作った。

武具は軽くて頑丈な作りになっていた。

そして槍も製作。そして全てに俺の紋章を刻印した。


これで兵士たちは、そろいの武器と装備で見栄えが良くなるだろう。




「シン様、お呼びでしょうか?」


「この武器を兵舎の武器庫へ運んでくれ。それと、兵士には好きな武器と武具を選ぶといいと言ってくれ」


カイ・ヘイモンドは、1つ1つを慎重に見ていた。

剣を手にとってすかして見ていた。剣のゆがみを見ているようだ。

そして指先で剣を弾いている。「コーーンーー」と高音に響いている。


「名品です。この武器を勝手に使っていいのですか?」


「君らの武器は、安物な武器だから役にたたないと思うんだ。だから作ったよ」


「誰かの密告ですか? 前の代理官がクソ野郎だったので、あ!失礼しました」


「いいよ、そんなことだろうと思っていたよ。こんな辺境な所まで悪い習慣がはびこっているなんて・・・帝国は終わりだな」


「シン様、滅多なことを言われると、皇族でもどうなるか分かりませんよ」


そうなのだ。帝国内では誰が見て聞いているか分からない。

ちょっとの悪口でも、捕まって牢獄に入れられて、拷問で言ってなくても言った事になってしまう。

それが帝国の今の姿だった。


「わたしは見捨てられた身だ、わたしの領土になったからには、そんな悪い習慣は許さない積もりだよ」


「それは、どのようなことですか?」


「カイ・ヘイモンド、わたしに言わせるつもりか?悪い習慣で私欲をむさぼり尽くした。テイテイ商店とラミアン執行官の悪事の証拠を揃えて執行しなさい。それで君の友人のカタキを取るといい」


「え!!知っていたのですか?」


「セバスが話を聞きつけて、間違いないと確信したそうだ。この短期間で分かるような悪事だ。相当な悪人なんだろう」


「そうです。奴らは、ヘドが出る程の悪人です。絶好の機会をいただき、ありがとう御座います。命に掛けても証拠を揃えてみせます。そして必ず捕まえてみせます」


その表情はれとしている。

そう言い残すと出てしまい、ここの武器のことを忘れてないか心配になってきた。



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