第3話スケルトン
倉庫に溜まった鉄で、森の木を伐採する斧を作ることにした。
魔眼なら、魔力を流して容易に鉄の結合を変えられる。
そして、その流れの途中で鉄に魔力が溜まるよう念じてやった。
すると魔力付与の付いた斧が出来上がった。
これで簡単に木を切り倒せるだろう。
何本か作ると、今度はノコギリだ。
又も魔力を流し、平べったくしてから形状を整えた。
ノコギリの歯を、1つ1つ思い浮かべてはイメージを強くしてゆくのがコツだ。
出来上がったノコギリを取っ手に差込んで、ギュウギュウに縛り付けた。
ちょっとやそっとでは抜けない。試しに振ってみた「ブヨ~ン」と鳴って面白い。
今度は、剣を作ろう。
この【魔のローラン】には魔の森があって、魔物が棲んでいる。
帝国に存在しない魔物で、1体に対して複数の人間が協力してようやく倒せるレベルだ。
過去から今に至るまで、何人もの犠牲者をだしている。
しかし魔物から取れる魔石だけが、ここの収入源でどうすることも出来ない。
そのせいで、ここの住人は帝国の人間より強い。
しかし、帝国に仇なす子孫である為に、帝国で働く機会が無を与えられずに、ここで暮らすことを強いられている。
ここの住民は一生、ここで暮らす運命だと帝国法で定められている。
なのでここの住民は、平民より低い土民扱いであった。
【魔のローラン】は広大であった。まだまだ未開の土地がそのまま残っていた。
奥に進むと魔物は強くなってゆくので、進めば進む程、危険が増していく。
そんな、魔物に負けない剣が必要だった。
しかし、今回は違う者に持たせる剣の為に、一心不乱で作り込んでいた。
「出来たぞーー。これは凄い物だ」
厚みもあって、両刃の幅が30センチにもなり、両刃の長さは2メートルを越していた。
普通の人間には持てない物だ。
何でも斬ってしまう剣だからキルソードと名付けた。
「ここにおいででしたか? このセバスは、探しておりました」
「セバス、何事だ」
「もうすでに、夜食も冷めてしまいました。もう1度温めますか?」
「俺が悪かった。冷めた物でいいから持って来てくれ」
「分かりました。作業は程々が宜しいかと存じます」
「うん、分かっている」
朝早くに目覚めた。
俺は屋敷を出ると、鍛冶職人候補が荷馬車に乗り込んで出かける途中だった。
俺に気付き「シン様、おはよう御座います。これから仕事場に行って来ます」と言い残して去っていった。
その時だ。
「ロベルト、命令に従いやって来ました」
総勢11人だが、勢揃いして待っていた。
大工仕事に適した頑丈な体格揃いで、見方を変えれば傭兵の猛者にも見える。
「今から魔の森に行く。戦えとは言わないがこっちで魔物討伐をした後は、木の伐採を頼む」
一様に驚く中で、ロベルトは言い放った。
「我らは、ここの生まれで御座います。何も臆していません」
何故か、建築班全員がここローラン生まれで、ここで採用された兵士だった。
「この先からは、結界外にです」
「成る程な、これが結界か?」
この結界は、古い時代に追放された賢者が作り出した。
その仕組みは、
今でもその子孫が、金色結晶を守り続けている。
兵士達に緊張が走った。
なんと、その結界を出た途端に地中に異常な反応が感じ取られ、間違いなく昔に死んだ強き男だろう。
俺は手に持ったオーブを、地面に埋め込んで叫んでいた。
「我の言葉で蘇れ!スケルトン」
しばらくして成功の手応えを感じた。
半端無い魔力がオーブに吸取られて、土が盛り上がった。
大きなスケルトンが立ち上がり、胸にあのオーブを抱え込んでいた。
「お前に名を授ける。ミラーがお前の名だ」
死霊術を使った成果だ。
死霊術の最初だけ使える特殊な霊術。
死霊術士は、最初の段階が非常に弱い立場な為に、1回こっきりの魔法であった。
それによって強いスケルトンを蘇らせた。
これ以降は、普通のスケルトンしか作れない。
後はスケルトンが魔物や人間を倒して、それぞれの熟練度を上げるしかない。
今はミラーの1体しか操れないが、今後この能力に期待してしまうだろう。
あのオーブは錬金術の応用で作り出した。
ミラー以外の魔物を弱くする結界を発し続ける、優れ物のオーブだ。
帝都で色々な高額の素材を使って作った。
あの結界をまとって魔物と戦えば、怖い物なしになるだろう。
そして、ミラーのステータスも普通の人間より凄いことに成っている。
ミラー
HP100
MP10
STR10★ VIT10
DEF10 INT3
DEX10 AGI10★
「シ、シ、シン様! あれは何ですか?」
「ああ、驚かしたな。あれはわたしが蘇らせたスケルトンだ。お前たちを守る役目を担うはずだ」
「大変だ!ブラックウルフが出てきたぞ!あれは連携して襲う凶悪な魔物だから、この数だと負けてしまう」
建築班にも恐れられる程の魔物らしい。
「ミラー、このキルソードと大盾を使って戦え」
黒い目の
キルソードと大盾を軽く持って、振向いた途端に凄い動きで走りだした。
飛びついたブラックウルフを、一振りで
次に襲ってきたブラックウルフは、頭に剣を突き刺されて、抜いた勢いで後ろに居たブラックウルフを斬り捨てた。
四方から襲うブラックウルフに、くるりと回って斬り伏せていた。
すでに7体が死んで、残りの6体は逃げ去っていた。
「さあ、伐採を頼むぞ」
「凄い!アッと言う間に終わってる・・・」
「アルタ、魔石を取っておけ。皆、木を切るぞ」
「え、なんて凄い斧だ!嘘のように切れるぞ」
作業が進み、分担して木の枝打ちしてから、荷馬車へ載せている。
2台の荷馬車は、きしみ出す寸前でようやく作業を止めた。
「どうやら、これ以上載せられませんね」
「ミラー、あの木を切ってみろ」
ミラーは、一振りで木の根元を切っていた。
木は「バタンッ」と倒れだした。
建築班を連れてこなくてもよかったかもしれない。
「ミラーは、あす戻って来る間、木を倒しておけ。魔物が出て来たら同じように倒していけ」
「シン様、あのスケルトンに1晩中木を切らせるのですか? もし冒険者に見つかれば戦う羽目になるかも知れません。誰か見張りを付けるべきです」
「誰を見張りに付けるんだ」
「ライアンとロジー、悪いが1晩中ここで見張りをしてくれ。その代わり明日は休みにするから」
「俺ら2人が見張りですか?・・・」
「そうだ、シン様、それでいいですか?」
「ロベルトが責任者だ。ロベルトに任せる」
「そう言うことだ。2人は頑張って見張りを頼むぞ。今日はこれで終わってもよろしいですか?」
「そうだな、これでいいだろう」
「皆!帰るぞーー」
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