●「死ぬな! 逃げるな! 生きろっ!」
「死ぬな! 逃げるな! 生きろっ!」
きっと、今の言葉は黒井姫子を赦せない俺が発したものなのだろう。
ここで死んで、逃げることなんて許さない。
変わりたいのなら、逃げずに足掻き続くべきだ。
「そうだよ、姫ちゃん! 死ぬなんてダメだよ!」
真白さんが続いてくれた。
「白石さん、こっちへ早く!」
稲葉さんも言葉を続けてくれる。
「黒井姫子だった自分から逃げるな! 立ち向かえ!」
「あああああああーーーっ!!!」
突然、白石がかなり切り声を上げた。
その声のせいで、俺たちの叫びはかき消されてしまう。
「やめて、もう……私は、黒井姫子……あなた達がいても、他の人はみんな、私を嫌ってる……不幸になれと思ってる……死ねと思ってる……どんなに足掻いても、私は結局、嫌われ者の黒井姫子でしかない……この世界に生まれた時から、私は憎悪の対象の黒井姫子でしかない……でも、ここから飛べば、私は……!」
ふっと目の前から白石の姿が消えた。
俺たちは急いで淵へ駆け寄ってゆく。
そこにはポツンと、赤い血溜まりの中に沈んでゆく、白石の姿が見えた。
「嘘……なんで……姫ちゃんっ……」
真白さんはその場で泣き崩れてしまった。
「お願いします! 友達が高いところから落ちちゃって! すぐに! すぐにっ!!」
稲葉さんは涙を堪えながら、救急車へ連絡を取っている。
「バカ野郎……最後までお前はなんでそんなに自分勝手なんだ……!」
何もできなかった自分に憤りを覚える。
もしかすると、俺はかける言葉を間違ってしまったのかもしれない。
正直、俺はアイツが死のうとしたことを、逃げだと思って怒りの感情を抱いていた。
アイツの気持ちを汲まず、一方的に言葉を発してただけだった。
もしかすると、それがアイツを追い込んで、こんな状況にしてしまったのかもしれない。
のぞみ公園の見晴らし台から飛び降りれば、望み通りの世界へ行ける。
せめて、その噂通りになっていて欲しい。
そう思わざるを得なかった。
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