暴君カノジョにフラれたショックで激痩せしたら、薔薇色の大学生活がやってきた!〜彼女達は俺に染まって、俺もやがて染められて……もう元カノがどうなろうと知ったことじゃない〜
★★エクストラルート第7話 脅かされた平穏。走り出す武雄。
★★エクストラルート第7話 脅かされた平穏。走り出す武雄。
「あれ? 今日は白石さん居ないの?」
「あ、えっと……」
その日、中庭での昼食会に白石 姫子は姿を見せなかった。
そして真白さんを初めて、林原さんや、金太までもが、暗い表情を浮かべている。
「タケ、お前知らないのか?」
「知らない? 何をさ?」
金太は嘆息し、彼女の林原さんを見遣った。
林原さんと真白さんは言葉も無く頷く。
そして俺は、金太に連れられて、物陰へ向かっていった。
「なんだよ、こんなところに連れ込んで?」
「良いか、タケ。落ち着いて、まずはこの動画を見てくれ」
そういって金太はスマホの画面を見せてくる。
そして、俺は言葉を失った。
"無修正 超絶美少女! E大学1年 H.Kちゃん パート1"
画面の中では、俺のよく知っている黒井姫子が、淫らな行為をしていた。
俺は金太からスマホを奪い、サムネイルを確認する。
明らかに黒井姫子との行為が撮影された動画が複数投稿されている。
再生数も、すでに数万回再生にまで昇っている。
俺は身体中から力が抜ける感覚に囚われた。
「なんだんだよ、これ……」
「詳しいことはさっぱり。でも、今学内じゃ、うちの学生っぽい子の動画あるって噂になってて。それが黒……白石さんっぽいって聞いて、調べてみたらこれで……」
「……教えてくれてありがとな……にしても、今日は暑いなぁ……」
「タケ、お前……」
俺は物陰を出た。
今日は酷暑なのだろうか。日差しが強く、痛い気がする。
俺はそのままこちらを固唾を飲んで見守っていた真白さんへ歩み寄る。
「白石さんから何か連絡は?」
「何も……こっちからしても、何も応じてくれないし……」
「そっか。もしかしたら、アイツもこの暑さでやられたのかもな」
「あの、染谷君……!」
「悪い。ちょっと俺もこの暑さで参ちゃっててさ。今日は屋内で食べるよ……」
1人になりたかった俺は、みんなへそう告げて中庭を後にした。
なぜか、白石 姫子のことが気になって、仕方がなかったからだ。
アイツは今どこで何をしているのだろうか?
もしかして、昔みたいにどこかで、1人で泣いて……
思い出は本当に綺麗なものだと感じた。
熱さも喉元を過ぎればなんとやら。
俺はだいぶ、アイツへの怒りが治まっているらしい。
うちの大学はでかい。
だから話題は多様に存在し、みんなは好き放題にいつも話をしている。
あんな動画程度、みんなが知るはずが無い。
しかし……
「知ってる? 教育学部の白石さんってAV出てるんだって!」
「白石……ああ、黒井さんのこと?」
「え!? そうなの? どうりで最近黒井さんのことみないなぁって思ってた」
「AV出たのが恥ずかしくて名前変えたんじゃない?」
そんな会話が、ちらほら聞こえた。
しかし話題にはしているけども、実は無関心という気がしてならない。
「なぁなぁ! これ見ててみろよ!」
「うはっ! エッロ! しかもこれってうちの大学?」
「そうそう! 黒井ってやつで、今は白石って名乗ってるみたい」
「まじか、良いなぁ。頼んだらヤらせてくれっかな、へへ!」
面白がって、動画を拡散する輩もいた。
彼らもただ、たまたま手に入った面白そうな情報を冗談っぽく口にしているだけだ。
彼らにとってはこの話題は他人事だ。
一時面白がったり、冗談を言ったりするだけのものだ。
無責任には感じるが仕方がない。だって、画面の中で乱れ狂うアイツは、みている多くの人にとっては友達でも、家族でもないので、好奇心以上の感情は殆ど存在しないと思う。仕方のないことだと思う。世間へ過大に流れるさまざまな情報に、いちいち感情を揺さぶられていては居られないから、だと俺は思っている。
それにこの騒動は、元を正せばアイツの、黒井姫子の行いが原因だ。
全てアイツの無茶苦茶な行動が、この結果を招いた。
例え姿を変えて、名前をも変えて、心を入れ替えようとも、アイツが黒井姫子として行ってきたことは消せやしない。
……そうだ、やっぱりアイツは、白石 姫子じゃなくて、黒井姫子なんだ。
そう思う俺が現れた。
ズルくて、卑怯で、人を駒のように扱っていた黒井姫子という最低な女。
これはきっと、因果応報なんだ。帳尻合わせが発生しただけだ。
だからこれは自業自得なんだと……。
(白石……お前は今頃……)
しかし同時に、ここ最近で妙に気持ちを惹かれる、白石 姫子の姿も思い浮かぶ。
彼女はこれまで失った何かを取り戻そうと必死に足掻いていた。
多少空回りしているところはあった。でも、それでも常に前へ進もうとする、白石を見て、俺は心を揺り動かされていた自覚がある。
黒井姫子と白石姫子ーー同じ人間なのに、まるで別人のように感じる2人。
でも根っこは同じ人間だ。
強そうに見えて、実は弱くて、脆くて、泣き虫で、人のことをいつも振り回す……本当に、本当に面倒な女だ。
「んったく……仕方ねぇな……!」
俺から出た言葉はそれだった。
俺は講義開始のチャイムを聞き流し、大学を飛び出した。
走りながら、何度も自分へは「仕方がない」と言い聞かせた。
どうせ、アイツは昔みたいに、1人でワンワン泣いているはず。
世界中が敵だと思い込んで、心を閉ざして、1人で勝手に病んでいるはず。
本当に手間のかかる女だ。面倒臭くして仕方がない……なんて、思うのに、俺はアイツを探して町中を駆け抜ける。
(妙なことをしているなよ。頼むっ……!)
なぜか、今回は胸のうちが強くざわついていた。
なぜか、俺の胸の内に白石 姫子の"死"を思わせる、妄想にも近いビジョンが浮かんでいるからだ。
飛び降り、踏切、自宅での……ああ、なんだよ、これ!
しまいにゃアイツが"とんでもない事件"を起こす予感さえする。
なんで今の俺は、こんな妙な妄想ばっかりしちまうんだ!
なんでよりによって、アイツにこんなに心を揺り動かされてんだ!!
それでも俺は町中を走り続けた。
生憎、春先でアイツの連絡先は完全に削除してしまった。
アイツが今どこに住んでいるのかもわからない。
探す方法は足しかない。
俺は手当たり次第に、アイツと時間を刻んだことのある場所を訪れる。
駅前の飲食店街、ショッピングセンター、公園、そして母校。
そのいずれにも苦くて、でも甘さのあるアイツの記憶が染み付いている。
だがどこにもアイツの姿は見当たらない。
俺は更に手当たり次第にそこら中を探し回る。
……そして何故か、この辺りでも心霊スポットとして有名な廃神社の前で足が止まった。
(まさか、ここに白石が……?)
不思議とそんな気がした。理由はわからない。だがなんとなく、ここがアイツにとって、あまり良くない場所なような、そんな気がした。
でもここを探し出すと、それだけで日が暮れてしまう。
もう少し、周りを探して万策が尽きたら、改めてここへ来よう。
そう考えて、その場から走り去る。
未だにアイツの痕跡は見つからない。
他にどこかないか。そう思った時、最近のアイツの心の拠り所であるcafeレッキスが思い浮かんだ。
もしかしたら大学へは行きたくないだけで、バイトには顔を出すかもしれない。
時間は17時過ぎ。アイツがいつもシフトの入るし時間。
すると店前で辺りをキョロキョロと見渡している"稲葉 兎"の姿を見つける。
「す、すみません……」
「ふぇっ!? って、貴方は、確か白石さんのお友達の……?」
「染谷です! アイツは……白石はここに来てませんか!?」
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