暴君カノジョにフラれたショックで激痩せしたら、薔薇色の大学生活がやってきた!〜彼女達は俺に染まって、俺もやがて染められて……もう元カノがどうなろうと知ったことじゃない〜
★兎ルート第1話 稲葉 兎とリアルで会う
★稲葉 兎(兎葉 レッキス)ルート★
★兎ルート第1話 稲葉 兎とリアルで会う
『ドーモ、こんばんはー! 兎葉 レッキスでーす! 今夜も来てくれてありがとうございますー!』
結局、色々と考えた末に、俺は大型連休をバーチャアイドル【兎葉 レッキス】さんへ使うことにした。
先日彼女から、ゴールデンウィーク中の特別企画として、毎日配信を行うと聞いたからだ。
「おーおー、懲りずにまたテンションを下げるアホがコメントを……はいはい、ブロックブロック」
そしてレッキスさんから直々に"モデレーター"を承った俺は、もう既に一視聴者ではなく、彼女の運営の1人である。
こうして配信の度に、コメントを監視し、アホが湧いたら対処するようにしている。
ちなみに、モデレーターは俺だけではなく、なんとあの炎上配信の時に協力してくれたニンジャさん、スレイヤーさん、イヤー&ウアーさんも参加してくれている。
俺なんかよりも、元某巨大掲示板サイト出身の皆さんの方がよっぽど頼りになるんじゃないのかな……。
とはいえ、兎葉 レッキスを見出したのは、どうやら俺らしいので四の五の言ってはいられない。
レッキスさんから直々にご指名を頂いたんだ。精一杯頑張る所存なのだ!
おっと、いつの間にか配信が終わっていた。
多分そろそろ……
「お疲れ様でーす! 今日の配信どうでしたかぁ?」
相変わらずレッキスさんは、配信が終わるとすぐさま、音声通話で俺へ感想を求めて来てくれるのだった。
「良いクオリティだったけど、少しマンネリ気味かな?」
「ですよね……接続人数も最近頭打ちですし……だから、先日スレイヤーさんから良い企画の案を頂きました!」
「ふーん。どんなん?」
「実写配信を交えつつ、ピヤング焼きそばの鬼辛地獄 finalMAXを食べてみた!」
「いやいやいやいや! アレはやばいって! 止めた方が良いって!!」
アレは絶対にヤバい。
何人かの配信者が、悉く地獄に落ちているのを目の当たりにしているからだ。
そしてツッコミどころはもう一つある。
「てかさ、実写って、顔出ししちゃうの……?」
「いえ、手元だけで写してやろうかと。なんか、イヤー&ウーアーご夫妻がレッキスの衣装を手配してくださるみたいで!」
「えっ? リアルでイヤー&ウーアーさん達に会うの!? 流石に危なくない?」
「あはは、大丈夫ですよー。お二人が運営している会社のことも教えて貰いましたし、一度電話でお話もしましたし。奥さんおウーアーさん、凄く優しそうな方だったんですよ?」
「そっか。でも、くれぐれも気をつけてね?」
「ありがとうございます! 早く、たけピヨさんにも会ってみたいな……」
「え?」
「な、なーんて! そ、それじゃ、今夜もありがとうございましたぁ!」
そこで今夜の会話は終了してしまった。
すごくモヤモヤしていたのは言うまでもない。
そっか……レッキスの中の人の"稲葉 兎"さんは、イヤー&ウーアーさん達と会うのか……すごく悔しい気分になった。
やっぱり、明日くらいに、cafeレッキスへ行って、"ドーモリアルでは初めてまして! たけピヨこと、染谷武雄です!"と、声をかけるとしよう!
●●●
「ああー……ダメだこりゃ……」
翌日、意を決してcafeレッキスへ向かうと、店はかなりの混み具合だった。
さすがは大型連休初日といったところか。
「あっ! いつもどうもですイケメンさん!」
すっかり、稲葉さんの同僚で同級生の"鮫島さん"には顔を覚えられてしまっている俺だった。
「おいおい、鮫島さん、イケメンさんなんて呼び方は少しフランクすぎるんじゃ?」
「いいじゃないですか、私とイケメンさんの仲なんですし!」
「ははっ、今日もテンション高いね」
とこんな感じで、冗談めいた会話をするようになっていた。
しかし目的である"稲葉 兎さん"は、ホールにはいない。
どうやら今日もキッチン担当で、表には出てこないようだ。
意を決してやってきたけど、やっぱり今日も俺が"たけピヨ"だと伝えられないらしい。
それに今日はお店が混んでそうだし、お暇を……
「ではではいつもお席へごあんなーい!」
「あ、良いよ。今夜は忙しそうだし」
「そ、そんなことおっしゃらず! すぐに片付けますから! さぁさぁ!」
そうして混み合っているのも関わらず、窓際の席へ着かせてもらった。
とりあえず今夜も、稲葉さん特製のパンケーキとコーヒーを頂いて帰るとしよう。
鮫島さんへの注文を終えて、待つこと大体30分……あれ? オーダー通ってる? さすがに遅くない?
●●●
(うわぁ……さすがに優しそうなあのイケメンさんでも、ちょっと怒り気味だよ! でも、ちょっと! あとちょっと!)
鮫島 海美は時計と、染谷武雄の注文伝票を何度も見比べて、肝を冷やしていた。
今日はいつものイケメンさんが、なかなか良いタイミングで店へ来てくれた。
彼と仲良くなったのも、彼がこの店へ通いやすくするため。
来るべきタイミングを見計らうため。
そして今日は、若干時間があるものの、最高のタイミングであるのは間違いない!
「稲葉さん、時間です。上がって良いですよ!」
「あ、はーい! お疲れ様でしたー!」
(よしっ! きたーっ!)
ようやく店長から発せられた合図の声に、鮫島さんは心の中でガッツポーズを取った。
。
待ってましたと言わんばかりに、ずっと隠し持っていた染谷武雄の注文伝票をエプロンのポケットから取り出す。
「あ、ああああー! ごご、ごめんなさーい! 一枚注文伝票忘れてましたぁ!!」
「ええ!? 嘘でしょ!?」
鮫島さんが叩きおいた伝票へ、稲葉さんが慌てた様子で飛びついた。
「ちょっと、これ30分も前のやつじゃん! なにやってんの!」
「ごめーん! 急いでよろしくー!」
「全くもう!」
かくして稲葉 兎は、まんまと鮫島 海美の策略に引っかかった瞬間だった。
「はい、パンケーキ上がった! 早く持ってって!」
「ごめーん、今手が離せないのぉ!」
「んもう! アンタがミスったんだから、行きなさいよ!」
「ホントごめん! 稲葉様よろしくー」
「ああん、もう!」
見兼ねた店長が、パンケーキを運ぼうと手を伸ばす。
しかし、すかさず鮫島さんが店長をブロック!
「て、店長! ちょっとこっちも大変なんです! さっさとこっちへ来てください!」
なぜか店長は鮫島 海美によってバックヤードに押し込められる。
もはやホールに出られるのは、稲葉 兎一人きり。
「私、もう上りなんですけどぉ……!」
そして、稲葉 兎は、この30秒後、親友の鮫島 海美に内心感謝することとなる。
●●●
「ん……? ぶふぅーっ!!」
俺は思わず、飲んでいた水を吹き出した。
なんで、どうして、さっきまでキッチンで働いていた稲葉さんが、パンケーキを持って俺の席に!?
「あ、あ、えっと……!」
稲葉さんもなぜか、頬を真っ赤に染めながらたじろいでいる。
「た、大変お待たせして申し訳ございませんでしたぁ! ご注文のパンケーキとコーヒーですっ!」
「あ、ど、どうも」
「この度は注文が遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした……」
そして深々と頭を下げられた。
注文が遅くなったのは、確かに不満だ。
だけど、遅くなったおかげで、こうして稲葉さんと対面できたのだ。
ああ、神様! 俺にチャンスを与えてくださって、本当にありがとう!
「そ、それでは失礼します……」
なんということか!
稲葉さんは料理を置くと、席からさっさと離れようとしているじゃないか。
もうチャンスは今しかない。
今しか!
俺は勇気を出してーー
「待ってください」
声をかけると、稲葉さんが歩みを止めた。
「ドーモ、リアルでお会いするのは初めまして! たけピヨこと染谷 武雄ですっ! いつもお世話になっておりますっ!」
……武雄と兎の様子を見て、鮫島さんが密かにガッツポーズをとっていたのは、いうまでもない。
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