第三章  ― 5 ―

 (水道水)

 人間が、一日に必要な水分量は、体重に比例するという。


50kg:1.7リットル 

80kg:2.8リットル


 一日に、2~3リットルの水分を必要というのは、あながち間違った話ではなく。

 一日に、汗等で出てくる水分は、1.5~2リットルになるそうだ。

 ちなみに、人間が、水分補給だけで、生きていられるのは、約一ヶ月だそうだ。



 (栄養補給)

 今は、食べ物がなくなって、固形物からの栄養がとれなくなった。


『そうだ、水道水に、お塩を混ぜよう』


 水道水に、お塩を混ぜて、塩分補給をしよう。


『なんて素晴らしい考えだ』


 そう思った。

 台所で、お塩の入った調味料ケースに、手を伸ばし、お水の入ったコップに、ひとつまみの、お塩を入れた。


『ほんのり甘く、お砂糖だった』


 お砂糖を、入れてしまった。

 いつも、お砂糖とお塩の調味料ケースは、隣同士に置いてある。

右が、お砂糖。左が、お塩と置いておいたはずだったのだが、置き場を替えて、置いてしまったようだった。

 

『お砂糖でも美味しい』


 これは、スポーツドリンクが、出来るのではないか。と、思った。

 スポーツドリンクは、大まかにいうと、お砂糖とお塩の配分から、できているのだ。

だから、美味しいスポーツドリンクを作れば、水分補給も楽しくなる。


 さっそく


『お砂糖とお塩をひとつまみずつ入れて、もう一度作ってみた』


 まぁー、なんとも言えない味のスポーツドリンクが、できあがった。

レシピさえ見ることができれば、美味しいスポーツドリンクが作れるのに。と、目が見えなくなったことに、悔しさを覚えた。


『目が見えなくならなければ、こんなこともしないだろう』


 とも、思ったのも事実だった。



 (あの日から何日が経ったのだろうか)

 目が見えなくなった、あの朝から、何日が経ったのだろうか。


『実家は、どうなっているのだろうか。元気にしているのだろうか』

『メダカは、生きているのだろうか。二匹で、社交ダンスを、踊っているのだろう

 か』


 少しずつだか、身体の調子が、悪くなってきていた。

 寝ている時間の方が、多くなってきたようにも思える。

 以前は、時間を知りたいと思って、テレビを何度もつけて、時報を聞いていた。

 いつのまにか、その時報を聞くことも、少なくなくなっていた。

 

『久々にテレビをつけてみよう』


 電源スイッチを押してみたが、テレビからは、何も音が聞こえてこなかった。

もう一度、電源スイッチを押しなおした。

それでも、テレビは、静かなままだった。


『?????』


『急いで、水道の蛇口をひねりに行った』


 水が出ない。

 ついさっき、まずいスポーツドリンクを、作って飲んだばかりだった。


『ついさっきだ』


いつもの通りに、水道水が蛇口から出ていた。


『水のストックなんか無いんだ』

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