第二章  ― 6 ―

 (ガスが使えた)

 アパートのガス供給は、プロパンガスだ。都市ガスと違って、建物ごとに大型のガスボンベが置かれている。そのガスボンベの内容量が無くなれば、ガスは使うことができなくなる。


『助かった。温かいお湯で身体を温めることができる』


 他の住民がガスを使えば、この温かいお湯を浴びることができるのだろうか。

そんなことを思いながら、全身にお湯を掛けた。


『少しさっぱりした気分になった』


 部屋に戻りテレビをつけた。


 「午後9時37分30秒をお知らせします」


『そんなに長い間お湯を掛けていたのか』


 少し落ち着いたら、おなかが減ったのを思い出した。朝から何も食べず、途中でこれでもかと、お水をたらふく、おなかに沈めた以来だった。



 (カセットコンロ)

 台所に行こうとしたとき、カセットコンロがあるのを、思い出した。


『お湯が沸かせる。そしてカップ麺を食べよう』


 お水のペットボトルも非常用に買ってあった。


『今こそ非常事態だ』


だから、ペットボトルの水を使おう。

なんて思いながら、ペットボトルを探していたら、収納スペースの奥の方に追いやったことを思い出した。

 それにいつ頃、買ったのかも忘れた。探すだけ無駄なので、台所にあるヤカンに水道の蛇口から水を注いだ。

 探しておいたカセットコンロと、お水の入ったヤカンをゆっくりと部屋にあるローテーブルの上に移動させた。


『カセットコンロの上に、ヤカンを置いた。』


 五徳の上に、ヤカンはちゃんと乗っているか。斜めになっていないかを手で確認して、問題がないことを確認した。

 そして危なくないように、ローテーブルの上にあった物を、すべてどかした。


『カセットコンロの火をつけよう』


 無事にカセットコンロの火が点いたのだろう。

ヤカンの下側がほんのり暖かくなった。

 これ以上触ると火傷だなと思いながら、もう一度台所に戻った。

そして、カップ麺を探した。これも非常時用の食料として少しだけ買って置いたものだった。

 探し当てたのは、どんぶり型のカップ麺だった。ラーメンだったようにも、どんな種類を買ったのか、覚えてもいない。

そうこうしているうちに、お湯が沸いたようだ。ヤカンから警笛音が聞こえてきた。

 火を止めて、急いで、カップ麺の用意を始めた。

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