第一章  ― 8 ―

 (突然スマートフォンが振動する)

 突然スマートフォンが、けたたましく振動した。目が見えなくなったことにより、耳がよく聞こえるようになったのだろうか。

 今まで以上にブルブルと振動するスマートフォンの音が大きく感じた。

 スマートフォンを、手にすることはできたが、画面に通知されている内容は、やはり解からなかった。

 電話がかかってきたのか、eメールが届いたのか。それとも他のアプリからの通知なのか。


『このままだと、誰とも連絡がとれない』


 と、焦りから。顔が青ざめるのと同時に、身体全体が震え、武者震いを起こした。


 また、スマートフォンが、けたたましく振動した。

スマートフォンを手に取って、見ることができない液晶画面に指を置き、電話を受ける動作をしてみた。



 (電話ではないのか)

 電話では、ないのだろうか。

 今どこを触っているのかも判らない。

 ただ、先ほどの振動よりは、長い時間スマートフォンが振動しているような気がした。


『どこを触ればいいんだ』


 焦りながら少しずつ、触る場所を変えてみたが、判らない。

 そうこうしているうちに、スマートフォンの振動が静かになり、止まってしまった。

 手のひらにある、スマートフォンを、両手で挟み、天を仰ぎながら


『誰だったのだろうか・・・』


 暗闇の世界にいる以上、電話であって欲しいと、願うばかりだった。

 文章で送られてきても、永遠に読むことはできない。ましてや、スタンプされても、もっと困る。そう感じていた。


『電話が掛かってきても、電話を受けることもできないから、一緒だけどね』


 と、笑った。

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