第一章  ― 4 ―

 (スマートフォンが見つかる)

 何年も住んでいる、この部屋の間取りや家具の場所等は、もちろん熟知している。

ただ、真っ暗闇の状況におかれた今は、あらためて、どこにどんなものがあるのかを、思い出しながら、手探りで行動をしなければならないことになった。


 少し落ち着こうと、両腕を上に挙げて背伸びを、しようとしたとき、ローテーブルに手が当たった。

 見つけたローテーブルの天板に手をつこうとした瞬間。スマートフォンが、手に触れたのが解かった。

 昨日、ローテーブルに置いたのだった。



 (これで助かる救急車を呼べばいい)

 スマートフォンを手に取り、119番通報をして、事情を話そう。

そう思ったが、その瞬間。


『絶望に変わった』


 スマートフォンのロックが、解除できないことに気がついた。

 4桁の暗証番号を押せない。昔使っていた二つ折りのいわゆるガラパゴス携帯電話ならボタンが突き出ていて、しかも5番の数字にはポッチが振られていた。5番を探せば119番はすぐに押せた。

 でも、スマートフォンは、のっぺらぼうな、液晶画面。

 5番おろか、今、画面のどこを触っているのか、まったく解からなかった。

 それでも試しに、右側にあるボタンを押して電源を入れた。そして、4桁の暗証番号を押してみた。

 押すたびに、スマートフォンは、ブルブルと振動を重ねていた。

 何度も何度もやっていたら案の定、スマートフォンは、ピクとも言わなくなった。


『完全にロックされてしまったのだ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る