第一章  ― 3 ―

 (テレビをつけよう)

 部屋の間取りは2DK。

 二部屋ある和室は引き戸で、仕切られている。引っ越しをしてきた早々、引き戸を外して二つの部屋を行き来できるようにしてあった。

 さっき見ようとしていた目覚まし時計は、その二つの部屋の間に置いてある。秒針を刻む目覚まし時計の方向に向かえば、その先にあるテレビ台に、たどり着ける。


『テレビの電源をいれた』



 (天気予報が流れてきた)

 目覚まし時計が鳴る時間は、朝の六時半。

天気予報は五十分頃だったから、起きてから二十分は、経っていることになる。

 

『もう、二十分も経っていたのか』


 顔を洗ってお湯を沸かして、コーヒーを淹れて、目覚めの一杯が、飲み終わっている時間ではないか。と、思った。

 歯を磨いて、着替えをして、七時少し前には、家を出ないと遅刻する。

 

 朝ごはんは、いつも車の中である

 パンをかじりながら出勤している



『今は、テレビの音がする方向だけが、唯一、方向を示す基準となった』

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