第12話 TRUE

「あら!琴音ちゃん、いらっしゃい」

「お邪魔してます」


 知美ちゃんの両親と、俊也としやくんが帰宅した。

 私の靴があったのに気づき、真っ先に知美ちゃんのお母さんが部屋を訪れて、今に至る。


 挨拶を終えた、お母さんは、部屋を後にした──入れ替わりで、俊也くんが部屋を訪れた。


「やっぱり......」

 

 そう、彼の口から声が漏れた。


「久しぶり、俊也くん」

「やっぱり、琴音さんが姉ちゃんに?」

「うん、琴音に、教えてもらった」

「その事なんだけどね......ちょっと大事な話があるの」

「大事な話?」


 私は、彩夏さんにもう一人の彼氏がいることを話し、そして、昨日の夜に理戸りとくんからもらっていた、二人のツーショットで映っている写真を見せた。


「う、嘘だ......」

「残念だけど、本当だよ。どうしても証拠が欲しいというのであれば、彩夏ちゃんのクラスの女の子に聞いてみようか。彼女たちは、昨日、彩夏さんは従弟と買い物に行ってると思ってるから」

「そ、それは、俺たちの関係が内緒だから、従弟って──」

「買い物の内容は、彼氏への誕生日プレゼント......そう、彩夏さんに聞かされているの」

「──そ、そんな......親戚の男の子へのプレゼントって言ってたのに......」


 私は極めつけの写真を俊也くんに見せた──今朝、理戸くんが誕生日プレゼントとしてもらった服を着ている写真を。

 

「......もし必要なら、今、ペアルックしてるらしいから、写真送ってもらおうか?」

「いい......十分だから。もう......十分」


 俊也くんは、彩夏さんとのメッセージの履歴をスマホに映し出し、私たちに見せてくれた。理戸くんのように、ツーショットも一緒に。


「これで、俺たちが付き合っている証拠になるかな」

「なる......俊也、私には、こんなことしか、出来ないけど」


 座り込んで落ち込んでしまった俊也くんの頭を、知美ちゃんが優しく撫でてあげていた。姉弟の微笑ましい光景だ。


「ねぇ、さっきペアルックしてるって言ったよね。てことは、二人は今、デート中?」

「そうだよ。そして、この後、私たちは二人と合流することになっているの。彩夏さんはそのことを知らないけどね」

「そうなんだ......それさ、俺も付いて行っていいかな?」

「もちろん。寧ろ、来てほしい。その方が話が早いから」


 こうして、私たちの方の準備は整った。


***************************


 夕焼けが自己主張を始め、町中が紅く染められている時間帯、ある公園の前で立ち止まった俺。


「懐かしいね、この公園」

 

 以前と同様、その公園に視線を向けていると、ベンチに半年前の俺と彩夏さやかの姿が映し出され始めた。


「まさか、行きたいところがここだなんて思わなかったよ」

「ここで俺たちの関係が始まったからさ......だから」


 俺は、そのベンチに近づくように歩き出す。

 俺を追うように、彩夏も歩き出す。


「終わらせるのもここかなって」

「え?」


 ベンチに腰掛ける頃には、俺の頬を涙が伝っていた。

 困惑した目で俺のことを見る彩夏。


「私の大切な後輩くんを泣かせるなんて、許せないなぁ~」

「私の、大切な、弟を泣かせた......絶対に許さない」


 彩夏の後方から、二人の先輩の声がした。

 それを視認した彩夏の表情が動揺に変わった──それが、先輩を見たからなのか、二人と一緒に歩いてきた俊也を見たからなのかは、俺には分からなかった。

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