第10話 Another
「本当に、ごめんね!急に来ちゃって」
「急、じゃない......昨日、メッセージ、もらったよ?」
私の親友の
「そうなんだけど──予定とかなかった?大丈夫?」
「大丈夫だから『いいよ』って、返信した......それに、私は、予定があっても、琴音を、優先する」
「えへへ、ありがとう!」
知美ちゃんの頭を撫でると、頬を真っ赤にして照れ始め、その可愛い表情をみた私の頬が自然と緩んでしまう。
「それで、どうしたの?琴音にしては、確かに、急な連絡だった」
知美ちゃんが、自分の部屋の扉を開けながら、私に尋ねて来た。
「あ、うん。ちょっと、聞きたいことがあってね」
「......分かった。大事な、話......メッセージでは、出来ないような。私、飲み物、取ってくる」
「それなら──」
「いい。琴音は、お客さん......だから、楽にしてて」
ぬいぐるみをベッドの上に置き、部屋を出て行く知美ちゃんを見送り、頭の中で、話をまとめておく......つもりだったのだがやっぱり、心配だったので、階段を降りようとすると、すでにお盆にコップとジュースを乗せて、震えた腕でそれを持っている知美ちゃんの姿があった。
「ジュース持つね♪」
「うぅ......ありがとう」
恥ずかしそうに、お礼を言ってくる知美ちゃん。
結局二人で、部屋までジュースとコップを運び、知美ちゃんが入れてくれて、準備が整ったと満足そうな表情を浮かべている。
「じゃあ、話して」
そう促されたので、私は、知美ちゃんの弟である
俊也くんに彼女がいたことを、知美ちゃんは知らなかったらしく、再び抱いていた黒い熊のぬいぐるみを落として驚いていた。
「──ということで、何か知ってたら聞きたかったんだけど、その様子だと......」
「ごめん、まったく......知らない。俊也に、彼女がいたのすら、今、初めて、知った。確かに、最近、妙に嬉しそうに、出かけてた。昨日も」
昨日、確かに俊也くんは彩夏さんと出かけていた。あんなに怠そうな態度を取っていたように見えたが、嬉しそうか......本当に、照れ隠しだったみたいだ。
「今日は、家族で出かけてる」
「そうなんだ......って、やっぱり予定あったんじゃん!ごめんねぇ~」
「大丈夫。元々、私は、行く気無かったから。それに、いい話を、聞けたから」
知美ちゃんの表情を見ると、分かりやすく怒った顔をしていた。
「あ、そうだ。ちなみにこれを見て欲しいんだけど──」
そう言って、昨日の俊也くんと彩夏さんのやりとりを隠れて撮影していたものを知美ちゃんに見せる。
「──この女の子に見覚えは?」
「ない、けど、綺麗な人。この人が、俊也を、騙してるの?」
「そうだね」
「でも、これだけだと、付き合ってるか、分からないね......あ、ごめんなさい、それで今日」
「うん......でも、大丈夫。いい方法がある」
「ん?なに?」
先程、知美ちゃんに見てもらったものを、彼女のスマホに送った。
「それを、俊也くんに送ってみて。『彼女出来たんだ、おめでとう』って。もし、しらばっくれたら『母さんと父さんに報告して、琴音ちゃんにも言ってパーティーだなー』って言ってみて」
私の依頼通りに、知美ちゃんがメッセージを送ると『彼女ですので、言いふらすのはやめてください』と返信が来て、彩夏さんの二股が確定した。
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