第8話 Another
帰宅してから俺は、食事は先輩と外で済ましていたので、入浴だけを終えて、自室に入り、連絡して欲しいとのことだったので『無事に帰宅しました』と、先輩にメッセージを送る。
予想外に空が暗くなるまで外に一緒にいたので、先輩を家まで送っていったので、俺の帰りを心配してのことだろう、俺がメッセージを送るとすぐに『安心しました♪おやすみなさい』と返信がきた。
彩夏と遊んだ後も、今日のように家まで送って、帰宅をしていたので、先輩のように連絡を求められ『よかった』と返信がくるというやりとりは何度もしてきた。しかし、彩夏が浮気をしていることを知った今、あの時の心配も彼女として事務的に行っていたもので、裏では、もう一人の彼氏と連絡を取っていたかもしれない。そう考えてしまうと、凄く、心が虚しくなってしまった。
眠ろうとしても、もやもやとした気持ちが、マイナスな思考が、俺の睡眠を邪魔してくる所為で、中々寝付けなかった。
俺は無意識のうちにスマホを手に取り、先輩に再びメッセージを送っていた──『通話できますか?』と。
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『何か、困ったことでもありました?それか、私から聞き忘れたことでもありましたか?』
「あ、いえ、その......なんというか、先輩の声が聞きたいなって......」
『はい?』
先輩が分かりやすく戸惑っている。当然のことだろう、いきなり後輩の男子に通話を要求され、要件を聞いてみれば、あなたの声が聴きたかったなんて......俺が先輩の立場なら要注意人物として自分の中のメモ帳に書き込むことだろう。
「そ、その変な意味じゃなくて......その、ひ、一人でいるのがキツイというか、中々寝付けなくて」
『......そう、ですよね。むしろ、ここ数日、そういった弱音を吐かず、よく我慢していた方だと思います』
「別に我慢なんてしてないんです。ただ、信じてたから──彩夏のこと。だから、その反動が一人になって、静かな空間にいて、襲い掛かってきたんです」
今日、彩夏がもう一人の彼氏と会わなければ、あの家の扉から女の子が出てきてくれれば、こんな気持ちにはならなかっただろう。こんな気持ちにならずに、俺はまだ彩夏を信じて、愛して、そして騙されていたことだろう。
『それで眠れなくて、誰かと話をしたくなったんですね?』
「はい。こんな風に気軽に話せる相手は、今はもう、先輩だけですから」
『そう言ってもらえると、凄く嬉しいです。私を嬉しい気持ちにさせてくれた後輩君に一つアドバイスです......明日も、学校はお休みです。眠れないのなら、それでもいいじゃないですか。私も付き合うので、眠れるまでお話しするなり......そうですね、あまりしたことは無いですが、ゲームなんかして遊びましょう』
「いや、そんな、電話をかけておいてあれですけど、申し訳ないですよ!」
『じゃあ、こうしましょう。私も今日一日、理戸くんと動物園で遊べて、楽しかったんです。その興奮冷めやらぬままの状態で、私も丁度、眠たくなかったんです。もしよろしければ、私が寝る間で、付き合ってもらえませんか?』
やはり、先輩には敵わない。
「今日のお礼として、付き合いますよ」
『ふふっ、ありがとう』
結局、数時間ほどゲームに不慣れな先輩でもできる簡単なオンラインゲームをスマホにダウンロードして、二人で遊んだ。いつの間にか、気持ちがリラックスしていて、先輩の欠伸につられ、俺も欠伸をした辺りでお開きになった......のだが。
『このまま繋げててください』
という先輩の要望により、俗に言う寝落ち通話が開始された。彩夏とも時々していたが、どうせ寝てしまうんだからと、その良さを実感していなかったが、今日は、なんだか先輩が近くに居てくれるような感覚にしてくれて──隣で寝ているような気がして、凄く心地良かった。
今日──いや、正確には昨日なのだが、一日、先輩のお世話になってしまった。いつかちゃんとお礼をしないとな。
琴音先輩との通話前とは比べ物にならないくらいの睡魔が俺を襲い、あっさりと眠りにつくことが出来た。
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あとがき
みなさん、いつもご愛読ありがとうございます!
コメントをくださっている方へ
改めていつもありがとうございます!
コメントの返信なのですが、どう返信すればネタバレにならないのか、その線引きが難しくて、返信が出来ない状態です。
『コメントありがとうございます!』だけの返信で、みなさんの通知欄に出現していいものなのかも迷っている状況ですので、これからも返信をしないかもしれません。
ですが、どうか、どうか「返信くれないし、コメント止めよ」とは思わないでください!!!みなさんのコメントが嬉しくて、楽しみで、投稿をしているところもあるので、どうかこれからもよろしくお願いします!!
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