第6話 Another
現在、俺は
その結果、彩夏は男の家を訪れ、何かを話している。彩夏は申し訳なさそうに、男はだるそうに。
あんな態度とる男のどこがいいんだ。
「俺、帰ります」
その言葉を最後に俺はその場を離れようとした。しかし、そんな俺の腕を琴音先輩が掴んだ。
「やめてください。何を言われても、俺はもう彩夏を信じれません......信じたくありません」
「......分かってます。あんな光景を見たら、あなたのように心に傷を負ってしまうのは仕方ないと思います。なので、どうです?気分転換に、私と遊びませんか?」
「俺、遊ぶ気分じゃ.....」
「だからこそ気分転換が必要なんです!ほら、行きますよ!」
どこにそんな力があるのか、それとも俺の身体に力が入らなくなってしまっているのか、どちらかは分からないが無理やりか引っ張られてた俺。でも、不思議と嫌ではなかった。
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「で、なんで動物園なんですか?」
「かわいい動物見てると癒されるじゃないですか〜......カワウソだぁ〜」
「なんか、先輩の方が癒されてますね」
思わず俺から笑みが溢れた。
「キミも癒されているみたいで良かったです」
どちらかと言うと、動物のおかげではなく、先輩のおかげなのだが、これは言わないでおこう。
「動物と触れ合えるみたいですよ!兎ですよ!」
またも俺の腕を引っ張ろうとした先輩の手を俺の手が握った。
「いや、あの......腕引っ張られると痛いし歩きづらいんで、これで」
「......はい」
恥ずかしそうに頷く先輩、自分の言動に恥ずかしさを感じてしまっている俺は、二人とも顔を真っ赤にして歩いていた。
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「どうですか?元気になりましたか?」
「えっと、現在進行形で無くなりそうです」
「え?どうしてですか?───あ、来ますよ!」
ジェットコースターがゆっくり上り、もうすぐ頂上......その様子を先頭の席で見させられていた。
そして、いよいよジェットコースターの醍醐味である下りが始まる頃には絶叫系のアトラクションが苦手な俺にとっては地獄の始まりだ。
「きゃぁぁぁぁ!!」
と、隣からは楽しそうな悲鳴。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
と、俺の口からは恐怖による悲鳴が発せられていた。
先輩、せっかく上がりかけてた気分が下がり始めてるんですけど!──と、いつもの俺ならツッコンでいたが、今日は違った。カラオケでストレス発散をする人がいるように、
こうして悲鳴だとしても大声を上げるのがすごく楽しく感じた。
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