第3話
昼休み、学食に向かう生徒、友人や恋人と昼食を摂る為に移動する生徒とすれ違いながら、俺も目的の教室へと足を進めた。
恋人である
「やっぱり、俺の見間違いだったんですかね」
「いえ、そうは言い切れませんよ。キミが見た日とは、条件が違いましたから」
結局、あの後、彩夏を尾行した俺たちは、何も収穫を得ることなく解散した。帰宅した彩夏が、家から出て来る様子が無かったのである。
「条件って言うと......俺と一緒に帰ったことですか?」
「そうですね。例の日、彩夏さんの都合で一緒に帰れなかったんですよね?」
「えぇ。なんか友達と遊ぶ予定があるからって言ってました」
「なるほど。では、その友達に心当たりはありますか?その子たちから話を聞いてみるのも一つの手だと思うので」
「でも、怪しまれません?なんで、そんなこと聞いて来るのかって」
「あぁ~、それもそうですね」
浮気の証拠を掴むのは──いや、浮気をしていないと確信できる情報を手に入れるのはやはり難しい。
「なんか、もう、めんどくさくなってきましたね」
「......すみません。こっからは、俺一人で探ってみますので、先輩は───」
「直接本人に聞いてみますか」
「えっと、それが出来ないから困ってるんですけど......」
「何も、口から出て来る情報だけが、すべてじゃないんですよ」
そう言う琴音先輩の笑みは、小悪魔のようだった。
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「明日?あー.....ごめんね、友達と遊ぶ約束してて」
そう言った彩夏は、後方にいたクラスメイトの女子に視線を向ける。「ごめんね」と一人が言ってきたので、本当のことなのだろう。.......口裏を合わせている可能性はゼロではないが。
「いや、謝らなくていいよ!突然誘ったのは、俺なんだから」
「えっと、明日は無理だけど、その、明後日の日曜日は、絶対に会いたいな!」
「分かった!何が何でも、予定を開けておくよ!」
「ふふっ、ありがとう!」
温かい空気が俺たちの間で流れている中に、唐突に、俺の後ろから琴音先輩が割り込んできて、彩夏と視線を合わせた。
「彩夏ちゃん、そういうことなら、明日、
「え?......あっ、うん。もちろん、いいよ!」
ズキッと心が痛みが走った。自惚れと言われてしまうかもしれないが、彼氏が別の女子と遊ぶ───それに対して、なんの抵抗も見せない彩夏を見て、俺の心の中の不安が膨らんでしまった。
「ありがとうございます。じゃ、理戸くん。また明日」
そう言って、琴音先輩は去っていった。
「理戸?琴音先輩に変なことしちゃだめだよ?」
「し、しないから!」
なんだ、ちゃんと心配してくれてるんじゃないか───なら、琴音先輩の頼みを断ってくれても......いや、彩夏は優しい子だから断るなんて出来なかったのかもしれない。
「理戸?」
「あぁ、ごめん。って、あれ?彩夏って、琴音先輩と知り合いだったの?」
「あっ......えっと、そ、そうなんだぁ!前に、お話ししたことがあって」
何だか、様子がおかしい───って、だめだな。彩夏を疑っている所為で、一つ一つの言動をつい、疑ってしまう。
早く、こんな生活、終わらせないと。
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