第2話
「じゃあ、帰ろっか、
授業が終わり、HRが終わり──すると、隣の教室の生徒であり、俺の彼女である、
肩まで伸ばした──所謂、ボブの長さの髪を揺らしながら、俺のぎこちなさ、いつもと違う態度を不思議そうに見ている。
「どうしたの?なんか変だよ?なんていうか......緊張してるみたい」
「す、するわけないだろ......あれだよ、一日ぶりに彩夏と帰れる喜びを隠すのに必死なんだよ」
「ふふっ、なにそれ」
口に手を当てて照れながら笑っている彩夏を見て、安堵の溜息を吐きながらも、俺は思ってしまった。
──やっぱり、見間違えだったんじゃないかって。
こんな小恥ずかしいセリフを、好きでもない男に言われて、照れるなんてことあるのかって......でも、もし、万が一にも彩夏が浮気をしていた場合、俺に気づかれていなかったわけだから、彼女の演技力は高いということになる。であるなら、これからはもっと注意深く......
──最低だな。
自分の見間違えかもしれないのに、証拠なんて何もないのに──彼女を疑うなんて......。
早く、こんな不安を消し去りたい......その為には、琴音先輩曰く、彼女が浮気をしている証拠を見つけなければいけないのだから、疑うな──なんてことは矛盾しているのは分かっているが、どうしても、彩夏を疑う自分に嫌気がさして仕方がないのだ。
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「それで、一緒に帰ったけど、特に変わったところはなかったと。何か隠し事をしている様子もなかったと」
「俺の目には少なくとも、そう見えました」
「そう......じゃあ、やっぱり、彼女が一人でいるところを観察するしかないわね」
......という琴音先輩の提案があり、俺もこんな不安をすぐに消し去りたいために、それに乗ることにした。
方法としては、簡単。俺と別れた後の彩夏の行動を尾行して観察するというもの。俺が用事があると言って、先に帰ってもらう手も考えたが、それだと彩夏が警戒して動かない可能性があるからとのことだった。
琴音先輩に指定された日、俺が彩夏と帰るために教室を訪れると、彼女は、クラスメイトの女子と楽しそうに会話をしていた。その中に割り込むのを申し訳ないと感じ、自分の教室に戻ろうと足を動かそうとしたところで、一人の女子生徒が俺の存在に気づいた。
「彩夏、愛しのダーリンが来てるよ~」
「もう、止めてよ~!」
弄られて、しかしまんざらでもなさそうな表情の彩夏。ここは、教室に入って「帰ろうか、愛しのハニー」とでも言って反応を見てみてもいいが、冷めた目で見られたら、俺のメンタルが持ちそうにないのでやめておく。
「ごめんね!夢中になっちゃって」
「大丈夫だよ、俺も今来たとこだし。なんなら、教室で待ってるから」
「んーん!こっちも大丈夫だから、帰ろ?」
彩夏のクラスメイト女子の温かい目に見送られながら、歩き出し、学校を後にした俺たち。それからは、いつものように下校し、いつもの場所で、別れる。
「じゃあね!」
「うん、また明日」
いつもと何も変わらない。本当に、いつも通りの時間を過ごした。
「じゃあ、行きますか」
「......はい」
物陰から出て来た琴音先輩と一緒に、俺たちは、彩夏の後を静かに追い始めた。
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