一章 新たな俺の日常
第一話 今日から彼と彼女の景色は一新される
昨日、疲労から道で倒れた俺は美少女萩野夏穂に助けられ、友達になった。
ものすごく簡単にまとめた結果、自分でもよくわからなくなってしまった。
何というか気絶して目を覚ました後の出来事だったから今でも夢だったんじゃないかという疑念が晴れない。
学校へ行く道、腕を軽く組んで『ん~』っとうなりをあげながら登校していると、学校の目の前に黒く長い高級車が止まっているのが見えた。
そこから出てきたのはもちろん萩野夏穂だった。
高級車のせいももちろんあるが何より彼女の容姿のせいで彼女はあらゆる視線を独占していた。
あんな美少女と友達か…やっぱ夢だったんじゃないか?
ベタに俺は頬を軽く二回たたいて夢ではないことを確認し、校門を通り、下駄箱へと向かった。
下駄箱に着くと、先に入っていた夏穂が自分の下駄箱の前で靴を履き替えていた。
「おっおはよう」
靴を足にはめるために夏穂が自分の右足の校内用の靴を二回ほど地面に叩いている時に俺は若干の照れがありながらも夏穂に挨拶をした。
「おはよう。しょっ翔馬…」
俺に気が付いた夏穂は嫣然とした表情で最初挨拶をしてくれたが俺の名前を呼ぶときはあちらも若干の照れがあったのか少しぎこちなかった。
それを見て更に恥ずかしさが増した俺だったが靴を履き替えなければ当然学校には上がれないので夏穂の近くにある自分の下駄箱まで向かう。
そんな俺を一歩下がったところで夏穂は無言で見つめている。
おそらくだけど一緒に教室へと向かうために俺が履き替えるのを
待っているのだろう。
何というか、プレッシャーが凄い。変な汗が手から出てくるんだけど。
待たせている夏穂のためにも急いで靴を履き替えて俺は靴を整える。
「じゃあ行くか」
「あっうん」
自分から言いたかったのか少し戸惑った表情を夏穂は一瞬見せたが俺達は学校の廊下へと上がり教室へと向かっていく。
「あれから大丈夫だった?体調」
「一応なんともなかった。ありがとな」
「ううん」
何に対しての事なのか良く分からない感謝の仕方をしてしまったが友達になって
最初の会話はあまりにもぎこちなさすぎた。
「夏穂のほうは大丈夫だったのか」
「何が?」
「何がってそりゃ…何だろう」
自分で質問をしておいて自分の質問の意図が分からない。
沈黙をできるだけ無くしたくて取り敢えず質問をしてみたが仇となってしまった。
夏穂も顔をしかめて困惑している。
「すまん。忘れて」
「あっうん」
「俺、友達出来たことないからどんな会話すればいいのかよくわからないんだ」
「えっ?翔馬も?私も友達出来たことないから分からないんだよね…」
お互いに苦笑いしながら言ったがお互いにこれではどうしようもないな。
「まあ。こういうのって日が経てば何となく分かるようになると思う。多分」
「だよね。最初だから仕方ない仕方ない」
俺が自信なさげに証拠もなく言うと夏穂は言い聞かせるように首肯してくれた。
俺達は教室に入り自分たちの席に座る。
夏穂は席に座ると集まる視線を気にも留めずただ黙々と勉強をし始めたが俺は窓の外を見ながら昨日、何となくまとまったラノベの内容について熟考している。
しかしながら朝、あんな風に挨拶を交わしたのなんていつぶりだろうか?
もしかしたら初めてだったかもしれない。
そのせいもあって、やはり物凄くぎこちなかったのは否めない。
もう少し自然に挨拶できなかったのか。
明日は…明日はもう少し自然に挨拶をしよう。
心の中で過去の自分に喝を入れ猛省し、ラノベのことなど忘れてしまって俺は萩野夏穂という初めての友達の事を考えてしまっていた。
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