第96話きつね・蔵原伸二郎:記事が書けない詩

蔵原伸二郎の「きつね」を読みました。

青空文庫で読めます。

https://www.aozora.gr.jp/cards/001821/card56983.html


  蔵原伸二郎は、明治三二年(一八九九年)生まれ、熊本県出身の詩人です。慶応義塾大学文学部在学中に萩原朔太郎の『青猫』の影響を受けて詩作をはじめ、雑誌「三田文学」「コギト」などに作品を発表しました。


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きつね


     蔵原伸二郎


狐は知っている

この日当たりのいい枯野に

自分が一人しかいないのを

それ故に自分が野原の一部分であり

全体であるのを

風になることも枯草になることも

そうしてひとすじの光にさえなることも

狐いろした枯野の中で

まるで あるかないかの

影のような存在であることも知つている

まるで風のように走ることも 光よりも早く

 走ることもしつている

それ故に じぶんの姿は誰れにも見えない

 のだと思つている

見えないものが 考えながら走つている

考えだけが走つている

いつのまにか枯野に昼の月が出ていた


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 この詩が気になって、ブログ記事を書こうと準備して、下書き保存してから一年以上。時々詩を読み返していたのですが、何故か、文章が書けませんでした。


こんな詩もあるんですね。


わからなくても、何故か好きな詩なんです。


 きつねのいる状況は、たぶん理解できていると思います。詩人が何かを伝えてくれていることもわかります。

それなのに、それが何か、私には読み取れなくて、鑑賞の文が書けませんでした。


 もしかすると、学者さんや研究者さんが書いた本でも読めば、答えが書いてあるのかもしれません。でも、あえて調べることをせず、わからないままにしておくことにしました。


 何度も読んでいれば、いつか私だけのイメージは浮かんでくるかもしれません。

それまでは、わからないままにしておこうと思います。

(記:2022-09-05)

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