第90話コレガ人間ナノデス ~詩集『原爆小景』より・原民喜:やるせない思い、静かな怒り

原民喜の詩集『原爆小景』より「コレガ人間ナノデス」を読みました。

青空文庫で読めます。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000293/card4769.html


原民喜は一九〇五年広島生まれの小説家、詩人。

爆心地に近い実家で被爆。広島の被爆の状況を綴った「夏の花」を書き上げ、その後も被爆体験をもとにした作品を書き続けました。

一九五一年に、東京西荻窪駅で自殺して亡くなりました。


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コレガ人間ナノデス


        原民喜


コレガ人間ナノデス

原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ

肉体ガ恐ロシク膨脹シ

男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル

オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ

爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ

「助ケテ下サイ」

ト カ細イ 静カナ言葉

コレガ コレガ人間ナノデス

人間ノ顔ナノデス


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原爆投下直後の 人間の姿。


 激しい怒りでもなく、悲しみでもなく、感情が途絶えてしまったように、その姿を直視している詩人が想像できました。


「コレガ人間ナノデス」カタカナで書かれている言葉は、ひらがなで書くよりも、詩人の心の奥底にある、やるせない思いや、静かな怒りをを強調するようだと感じます。


 詩の内容については、説明は必要ないでしょう。

読むたびに、心が重たくなってしまうのですが、目をそらすべきではないのですね。


夢物語ではなく、現実に起こった事なのですから、キツくてもしっかり受け止めるべきなのだと思います。

(記:2021-08-06)

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