第59話證城寺の狸囃・野口雨情:狸と和尚さんの陽気なセッション
野口雨情の「
詩というよりは、コミカルで楽しい童謡でお馴染みですね。
青空文庫で読めます。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000286/card49178.html
野口雨情は一八八二年(明治十五年)生まれの詩人、童謡作詞家。
佐藤佐次郎の雑誌「金の船」に童謡を発表、また全国を旅してその地の民謡も作詞しました。
「赤い靴」「七つの子」「シャボン玉」「青い目の人形」など、今も親しまれている童謡をたくさん書いていて、北原白秋、西条八十とともに三大童謡詩人と言われています。
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證城寺の狸囃
野口雨情・詩 中山晋平・曲
證、證、證城寺
證城寺の庭は
ツ、ツ、月夜だ
皆出て来い来い来い
ぽんぽこぽんのぽん
負けるな負けるな
和尚さんに負けるな
来い 来い 来い来い来い来い
證、證、證城寺の萩は
ツ、ツ、月夜に花盛り
ぽんぽこぽんのぽん
※「
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歌にある證城寺は、千葉県木更津市にある「證誠寺」のことです。雨情が木更津を訪問した時に、證誠寺に伝わる狸伝説を耳にして書いたものだそうです。
一九二四年(大正十三年)に児童雑誌「金の星」に発表されて、その後、作曲家の中山晋平が曲をつけました。
證誠寺の狸伝説は、群馬県館林の「分福茶釜」、愛媛県松山市の「八百八狸物語」と合わせて三大狸伝説と呼ばれています。
證誠寺の狸伝悦は、陽気な歌詞とは少し違って、少し哀れなストーリーなのです。
物の怪が出るようになったお寺に、住み着いたお坊さんが、三味線を聞くと、それに対抗するように狸たちが、腹鼓を打って踊りました。
面白くなったお坊さんと狸は、三晩続けて大騒ぎして楽しみましたが、四日目には狸は現れませんでした。
お坊さんが心配して、庭を探すと、隅の方に、お腹を破って倒れている、大きな狸がいたのでした。
證誠寺の狸伝説については下記サイトが参考になります。
http://www.pleasuremind.jp/COLUMN/COLUM128.html
あまりにも有名なので、今更説明するまでもない詩です。
タイトルが「狸囃子」なので、当然わかるわけですが、詩の中には一度も「狸」という言葉が出てこないのです。語り手は「おいら」で、おいらは狸。狸の側から書いた詩なのですね。
もしかすると、伝説で哀れな最期を迎えてしまう狸の親玉が、おいらなのかもしれないと、想像しました。
でも、哀れではありますけれど、陽気に歌って踊って楽しく過ごせたのは、狸冥利に尽きる気もします。
青空文庫の詩では、歌詞の最後のところ
「證、證、證城寺の萩は ツ、ツ、月夜に花盛り
己等の友達ャ(※)ぽんぽこぽんのぽん」なのですが、
実際に歌われている歌詞は「己等は浮かれてぽんぽこぽんのぽん」になっています。曲をつけるときに変えたのでしょうか、よくわかりませんでした。
最近は狸などの野生動物は、身近に見られなくなりましたが、昔はもっと民家の近くにいて、身近な存在だったのでしょうね。
私の住んでいる地域は田舎ですので、二十年くらい前までは「たき火をしていると狸が火にあたりに来た」なんて話もありました。
野ウサギがいたり、キジの親子が草陰に隠れていたりしたものでしたけれど、最近は、あまり見かけなくなりました。少し寂しい気もします。
(記:2016-11-07)
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