第54話星と花・土井晩翠:美しいけれど、なんとなく違和感
土井晩翠の「星と花」を読みました。
詩集『天地有情』(一八九九年博文館)に掲載の一篇。
青空文庫で読めます。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001081/card42233.html
底本は、『明治文学全集58 土井晩翠、薄田泣菫 浦原有明集』(一九六七年年筑摩書房)
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星と花
土井晩翠
同じ「自然」のおん母の
御手にそだちし姉と
み空の花を星といひ
わが世の星を花といふ。
かれとこれとに隔たれど
にほひは同じ星と花
笑みと光りを宵々に
替はすもやさし花と星
されば曙雲白く
御空の花のしぼむとき
見よ白露のひとしづく
わが世の星に涙あり
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文語体の詩は独特のリズムがあって、音読すると気持ちが良いです。
でも、現代の私にとっては、やや堅苦しくて、直接に感情が伝わりにくいようにも感じます。
詩人は、空の星と地上の花は、同じ母から生まれた姉妹だと詠っています。あちらとこちらに遠く離れていても、その香りは同じで、夜ごとに交わすほほえみと輝きはやさしいと。
そして夜明けの雲が白んでくる頃には、空の花は萎んで消えてしまい、その時、地上の花はひとしずく、朝露の涙を流すのです。
星と花という柔らかいイメージを描いているのですが、歯切れの良い、キッパリした雰囲気の詩です。男性の目で星と花を表現すると、こうなるのでしょうか。
美しい詩で、状況としては、とてもよくわかるのですけれど、なんだか理屈っぽくて私には共感しにくかったです。
著名な詩人の詩を批判する気はなくて、好みの問題だと思うのですけれどね。
(記:2016-10-21)
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