第49話スラップスティック・バラード・長田弘:繰り返しのユーモアを楽しむ
長田弘の「スラップスティック・バラード」を読みました。
『長田弘詩集』(ハルキ文庫)に掲載されている一篇。初出は『言葉殺人事件』(一九七七年晶文社)です。
長田弘は一九三九年福島生まれの詩人、児童文学家、文芸評論家です。
早稲田大学文学部在学中に詩誌「鳥」を創刊、雑誌「現代詩」「詩と批評」等の編集に参加しました。
二〇一五年胆管癌のため七五歳で亡くなっています。
スラップスティックとは「slapstick」道化師が手にしている棒のことで、ドタバタ喜劇というような意味です。
バラードとは、「ballade」古いヨーロッパの詩の形式の一つで、日本では
この詩も、繰り返しが面白い詩です。
最終行ではなくて一連二行のうちの、最初の行が繰り返しになっているのですが。繰り返しの一行目と、変化して行く二行目が面白い。
なんだ? なんだ? と思っていると、七連目、八連目のオチでクスッという笑い。
単純に言葉遊びの面白さ、繰り返しのユーモアを楽しむ詩です。
最近のお笑いではあまり見られなくなりましたが、昔の漫才やコントには、よく繰り返しのユーモアが使われていました。
同じ行動を何度も、何度も繰り返して、ほんの少しずつ変化させながら、オチへ導くというやり方です。
この詩を読んでいて、若い頃見た、故・坂上二郎さんの、オペラでの演技を思い出しました。
「メリー・ウィドウ」だったか「こうもり」だったか、演目は忘れてしまいましたが、二郎さんが、オペラ団体、二期会の公演に出演されたことがあって、たまたま見に行った時に出演されていました。
二郎さんの役は執事で、主人から受け取ったシルクハットを、壁のフックに掛けるというシーンでした。
最初に掛けた時にうまく行かず、シルクハットは床に転がってしまいます。二度目の挑戦、三度目の挑戦と繰り返すと、客席からはクスクス笑いが起こります。そして、最後に見事掛かった時には、盛大な拍手と笑いでした。
そのシーンだけが、何十年もたった今でも思い出せます。単純な繰り返しのようでいて、客席の雰囲気を察して演技に変化を付けるという、高度な芸だったように思い出します。
深刻な悩みだったり、心の奥を暴露したり、詩は詩人の内面を表現することが多いですが、この詩のように、軽やかに言葉の面白さを、ユーモラスに表現する詩に心惹かれるものを感じました。
(記:2016-10-03)
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拙作をお読みいただきましてありがとうございます。
今回で50話、詩49篇まで投稿することができました。
予定では、詩100篇を目標としていますが、原稿整理等のため、約1ヶ月ほど更新をお休みさせていただきます。
再開した時には、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
2022年7月29日 仲津麻子
●更新を再開しました。
これからもよろしくお願いします。
2022年8月29日 仲津麻子
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