第48話金魚は青空を食べてふくらみ・桜間中庸:自由にイメージをめぐらせて楽しめる詩

桜間中庸の「金魚は青空を食べてふくらみ」を読みました。

青空文庫で読めます。

https://www.aozora.gr.jp/cards/001604/card53927.html

底本は『桜間中庸遺稿集』(一九三六年ボン書房)


桜間中庸さくらまちゅうようは、一九一一年生まれの詩人。早稲田大学在学中に童謡研究会に所属して、友人とともに「早稲田童謡」を創刊しました。

一九三四年大学在学中に亡くなっています。


===================

   桜間中庸


金魚は青空を食べてふくらみ

鉢の中で動かなくなる

鳩だか 鉢のガラスにうすい影を走らせる

来たのは花辯はなびらか 白い雲の斷片かけら


===================


 タイトルの「金魚は青空を食べてふくらみ」は、青空文庫に掲載時に便宜上、詩の一行目を取ってつけられたもので、もともとは無題の詩でした。

底本のタイトルの部分には「○」が記されているそうです。


 この短い詩の中で印象的なのは、この一行目です。「金魚は青空を食べてふくらみ」 なんだか理屈抜きで好きです。

ぷっくりした可愛い金魚がイメージされて、なぜか頭から離れなくなりました。


 ただ、この金魚、金魚鉢の中で動かないのですよね、一瞬死んでしまったのかとも思ったのですが、死んだ金魚ならお腹を上向けて浮かぶと思うので、この詩の印象とは違うように感じます。


 鉢の中で動けなくなるほど、金魚が大きく膨らんだというイメージなのかもしれないなと思います。おそらく、実際にそういう状況がおこっているわけではなくて、詩人のイメージの中のできごとなのでしょう。ちょっとユーモラスな感じもしますね。


 動かない金魚が入った鉢の外では、鳩? 何かの影がサッと動きます。

やって来たのは、花びらか、白い雲の欠片か、わかりませんが、静と動の対比が描かれています。


 たった四行の詩の中で、私は色々な想像をしたり、空想したりを楽しみました。この詩人の詩ははじめて読みましたが、波長が合うというかお気に入りの詩人になりそうな予感です。他の詩も読んでみたいと思いました。

(記:2016-10-01)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る