第三話:自動作業の切り忘れ
「ああ、来た来た。テミア、こっちよ」
「ふわぁ~ぃ、お待たせソミヤちゃん、イズナちゃん~」
今日もレポート提出と会議の資料作りを終えて勤務時間が終わる。
久しぶりに新人女神だけで女子会でもしようと集まる。
「なに疲れた顔しているのよ、テミア?」
「いやぁ、教育係の女神様に大目玉喰らってね。会議用の資料が別件の資料だったので会議に参加した神様たちから不評が出てね」
「テミアちゃん、ちゃんと確認しないからぁ~」
そんな話を言いながら「居酒屋みさき」に入って行く。
ここは色んな料理が出るので学生時代から使っている居酒屋さん。
お店に入ると相変わらずピンク髪の私たちより若そうなメイドさんと青髪の更に若そうな中学生くらいなメイドさんがいる。
奥にはここのおかみさん (?)でどう見ても中学生くらいなんだけどやたらと胸の大きな銀髪の少女がお魚とかさばいている。
「いらっしゃいませでいやがります」
「あら? 新顔? この不景気によく人を雇うわね?」
黒髪のやはりかなり若い、中学生か高校生かくらいの女の子がおしぼりとお茶を出しててくれる。
「こちらメニューでいやがります。お決まりになりましたら呼ぶでいやがります」
そう言って奥に戻って行ってしまった。
「ねぇねぇ、あの子なんか竜族の匂いしない~?」
「はえ? そうなの??」
「うーん、ここのおかみさん結構いろいろな世界の眷属を巻き込んでいるらしいから、もしかしたらどこかの世界の眷属を借りてきているのかもね。そうすれば研修員として費用も安いし、管理局の神様の目も誤魔化しやすいからね」
そんな事を言いながらとりあえず生ビールを三人分頼んで乾杯する。
「ぷっはぁーっ! 美味しいぃっ!!」
「ふう、久しぶりに外で飲みだもんね」
「そうそう、あの病気まだまだ蔓延が止まらないらしいから何時また蔓延防止策で非常事態宣言が出るか分からないって言ってたよ~」
ただでさえ厳しい世の中なのにこの神の世界で発生した病気がかなりヤバいものだった。
くまさんのぷーに似ている指導者がしっかりしないからここまで問題が大きく成ったとかならないとか巷では噂されている。
「ところでソミヤちゃんのとこの世界どう? 私やっと国が出来始めた感じだよ~」
「なに、まだ建国状態なの? うちは四大文明が立ち上がってどんどん進化しているわよ?」
「私の所も魔法王国が出来あがって統一戦争しているよ~。帝国になれば資源活用が十分にできるから浪費が抑えられるねぇ~」
ええっ!
もうそんなに発展しているの!?
ま、まずい。
私なんかやっと称号で「建国王」が出始めたばかりなのに……
「あっ、でもなんかうちの世界って私を崇める宗教が大きく成って来てメシアが発生し始めているわね。このあいだも十字架に張り付けされていたみたいだけど」
「テミア、あまり神託配りまくるとメシアが大量発生して宗教派閥が出来るわよ? 私たちの意思は神託としてその世界に行くけどそこの住民たちがちゃんと理解できるほどの知能と魂の器が無いから気を付けないといけないのよ?」
「そうだね~、私の所も大元は私の神託だったのだけど三大宗教とかに分かれちゃって宗教戦争していたもんねぇ~。今は和解してお互いに認め合っている様だけど、大元は私が女神様なのにぃ~」
うーん、私たち女神の意思を伝えるのがやはり難しいのか。
ままならないモノね。
低次元の生命体に私たちの意思を受け入れるのにはキャパオーバーになりやすいって教科書にも書いてあったしなぁ。
そう言えば、教育係の女神様も自分が担当する世界には髪の毛一本くらいしか直には介入できないって言ってたもんなぁ。
と、私はモノリスを投入していたことを思い出す。
「あの、もしかしてモノリスとか投入して私の意思を伝えるのってまずいのかな?」
「テミア、あなた本当にそれしちゃったの? 低次元の世界に私たちのアイテム送っちゃったらオーパーツじゃすまないわよ? 下手に触れたりしたら場合によっては精神エネルギーが体から離反して特殊能力を持つ個体も出ちゃうんじゃない? 時を止めたり、いばらを使って念写したり、モノや傷をもの凄い力で直したりする能力者が出ちゃう場合もあるのよ?」
ま、まずい。
それってパワーバランスを崩す原因になる。
「で、でも取りあえず基本プログラムの自動作業をさせているからよほどのことが無い限りおかしなことには……」
「あなた、その自動作業はちゃんと設定できている? 基本設定だと進化優先になっているから血を血で洗うような戦争が起こっちゃうわよ?
さぁー。
思い切り血の気が引ける。
新人なのに新世界創世なんて重大任務与えられているからデフォルトの仕様でやって行けば無難だと思っていた。
それにこの所は教育係の女神様のお手伝いで会議資料とか作っている方が忙しくて全然あの世界見ていない。
「で、でも今日明日でどうにかなるって事は無いでしょう?」
「まあ流石にすぐすぐとはならないでしょうけど、毎日確認している?」
「うっ、この所忙しくて自動作業にまかせっきり……」
「あ~、それだとどんどん作業こなしちゃうからちゃんと適度な所で切らないとだめだよぉ~」
自動作業の切り忘れってヤバいものなの?
なんかどんどん不安になって来た。
「まあ、明日ちゃんと確認した方が良いわね」
ソミヤちゃんにそう言われドキドキの私だったけど、とりあえず今は飲んじゃおう。
私はその晩大いに現実を忘れる為に飲みまくるのだった。
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