第6話

あいつからチョコが欲しかった奴等を横目に、放課後、図書室に行くと、緊張した面持ちの彼女が待っていた。

「呼び出してごめんなさい。あの、これ!」

綺麗にラッピングされたチョコを差し出された。

思わず受け取りながら

「友達から始めてみない?」

と言うと、手渡した姿のまま彼女が固まる。

予想外の展開だったらしい。

驚いた顔をして、しばらく俺の顔を見ている。

なんだろう?

人間って、本当に鳩が豆鉄砲食らった顔をするんだな……って、込み上げる笑いを噛み締める。

「俺、彼女とか始めてだから、取り敢えず友達から関係を作っていくのでも良い?」

そう話しかけても、彼女は固まったままだ。

「やっぱり、恋人じゃないとだめかな?」

と聞くと、彼女はハッとした顔をしてから、首がもげるんじゃないか?って位に首を横に振った。そしてふわりと笑顔を浮かべると

「嬉しい!本当に?」

何故か、差し出されたチョコの箱をガッチリ掴んで俺の顔を見上げた。

その顔がなんとも、散歩に行くと分かった時の犬のようだと思った。

「えっと……これは、くれるんだよね?」

しばらくチョコの箱をお互いに持ったまま固まっているので訊くと

「あ!ごめんなさい」

そう言って慌ててチョコの箱から手を離した彼女。

真っ赤な顔をしてアワアワと慌てている彼女に

「じゃあ、これからよろしくね」

と言って手を差し出すと、彼女は目を見開いて俺の手を握り返し

「ありがとう!私、頑張るから!彼女になれるように、頑張るから!」

そう言って、俺の手をブンブンと振っている。

彼女の子供のように無邪気に笑う笑顔を見て、興味本位から始まった彼女への思いが、少しずつ恋愛感情に変わっていく予感を感じた。

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