第3話
そんな彼女に、特定の奴等が時々薬を貰っているのに気付く。
「田上、検便の容器に入った薬くれ!」
「検便って……なんか表現が嫌!」
そう言いながら、鞄からポーチを出した。
「はい、お水ある?」
「水は用意したから大丈夫」
そうやり取りをして、彼女から薬を貰っている。
ある時、星川が腹痛を起こしていた。
保健室に行こうとすると、いつも彼女から薬を貰っている菅原が
「星川、保健室に行く前に、田上から薬もらえば?あいつの持ってる腹痛の薬、すげぇ効くんだよ」
と話し、彼女に声を掛けた。
星川とは仲良く無いし、他人の常備薬ってどうよ?って考えていると、菅原が薬を貰って来た。
中味むき出しで、何の薬か分からない。
(大丈夫なのか?)
と、見ていると
「整腸剤らしいから、大丈夫だよ。田上も腹痛持ちらしくてさ、あいつがたまに飲んでてさ。俺もそれで何度か分けてもらったんだけど、すげぇ効くから」
って星川に渡している。
「騙されたと思って飲んでみろって!」
そう言われて飲んだ星川。
暫くして
「長塚、凄いよ。田上の薬。あんなに腹が痛かったのに、飲んで少ししたら、痛みが引いたよ」
と、次の休み時間に呟いていた。
彼女の鞄には、ドラ○もんのポケットならぬ「たまちゃんのポーチ」なる物が入っているらしい。
「田上、絆創膏ある?」
「田上、ボタンが取れた~」
「たまちゃん、ソーイングセット貸して!」
「たまちゃん、爪切りある?」
みんな彼女に聞くと、鞄から猫のイラストが描かれたポーチを取り出し、御要望の物を差し出す。
男に至っては、ボタンを彼女に付けてもらっていた。
しかし、本人は不器用らしく、針の糸通しが苦手らしい。
「お前、本当に不器用だな!」
ってからかわれながら、結局、何やら針に糸を通す道具を使って糸を通している。
嫌な顔一つせず、ボタンを付けて渡す彼女を見て
(なる程ね……、こりゃあ勘違いされるわな)
と見ていた。
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