第2話 思い出

「長塚君、好きです!」


高校1年の6月。

同じクラスの田上優里に告白された。

正直、好みのタイプでは無かったので

「ごめん、好きな人が居るから」

と断ると、目に涙を浮かべながらも必死に笑顔を作って

「そっか……。ごめんね、呼び出して」

て呟いた。

俺はそのまま彼女を残して、さっさと帰宅したくらいに彼女に興味が無かった。

 彼女は男女共に友達が多く、いつも楽しそうに笑っている。

どうやら性格がサバサバしているらしく、普段女子と話すタイプでは無い男子からも友達として好かれているっぽかった。

ただし、かなりの天然でもあるらしい。

俺が見掛けただけでも、何も無い場所で転ぶ。

階段でコケる。

先生を「お母さん」と間違えて呼んで、爆笑されているような奴だった。

それでも、彼女が『女の子』になる瞬間がある。

俺と目が合うと、彼女は1人の女の子に変わる。

それは、俺だけが知っている顔だった。

誰に対しても平等に接する彼女が、俺にだけ全身で好意を示してくれているのは正直、気分が良かった。

「田上さんって、長塚が好きだろう?」

あまり人の恋愛事に興味の無い星川が、ポツリと言い出した。

「え?……さぁ、どうかな?」

と答えると

「彼女、モテるのに鈍感というか……、長塚にしか興味無い感じだよね」

そう言われて驚いた。

「え?彼女モテるの?」

驚く俺に

「え?うん、田上さんが好きって何人か言ってたよ。ほら、分け隔て無く、誰とでも仲良くするタイプだからね」

そう言われて、最初はほんの興味本位だった。

クラスで目立つグループの奴等とも、地味なグループの奴等とも同じように接する彼女。

無自覚なんだろうけど、本来なら女子が絶対に話しかけない奴等とも、隣の席になれば気軽に話していて、真っ直ぐ相手を見て話す彼女に勘違いしてしまう奴等がいるんだろうと思った。

何人かにあからさまなアプローチをされているのに、全く気付かず、斜め上の反応をする彼女を気付いたら目で追っていた。

それは「好意」では無く、「興味本位」なだけだった。

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