通り雨
青空
第1話 再会
久しぶりに実家帰省すると
「重、結婚は?」
「そろそろあんたも落ち着いたら?」
両親から口うるさく言われて、溜め息を吐く。
「一時期遊んでたから、バチが当たったのよ」
姉貴の言葉にカチンと来て、玄関に向かう。
「重信!まだ話は終わってないのよ!」
母さんの声を背中で聞きながら、玄関で靴を履いて家を飛び出した。
「はぁ……」
深い溜め息を吐く。
今や30代で未婚は珍しくは無いのに、両親は俺の顔を見る度に「結婚」を口にする。
今まで、たくさんの女性と付き合っては来た。
大学時代には、不誠実な付き合いもたくさんして来た。
どんなに綺麗な人と付き合っても、若くて可愛い子と付き合っても、思い出す人が居る。
「長塚くん」
「くん」の部分の音が、少しだけ上がる彼女の声。
俺を見つけると、全身で「大好き!」と訴える眼差しも笑顔も、その頃は当たり前だと思っていた。
中学まで私立の男子校に通っていたので、高校から公立の共学に通いだして、女の子との付き合い方なんて知らなかった。
硬派がカッコイイんだと信じて疑わなかったあの頃。
もっと上手く付き合えていたら、俺達は変わっていたのだろうか?と時々思ったりしてしまうのは、未練があるからなのだろうか?
そんな事を考えながら歩いていると、神社から降りて来た親子に目が止まる。
最後の1段を
「せ~の!」
と3人で言うと、低い階段をジャンプして降りた。
楽しそうな笑い声を上げる、いかにも絵に書いたような幸せそうな家族をぼんやりと眺めていると、子供を真ん中に手を繋いで歩く母親の顔を見て息を呑んだ。
年齢を重ねているけど、幸せそうに笑う彼女の笑顔だった。
そして、そんな彼女を気遣うように、彼女とは反対側の娘の手を握りながら、彼女に手を差し出して大きな荷物を受け取ると、肩に掛けて幸せそうに笑う父親の顔に見覚えがあった。
二人の幸せそうに笑う顔を見て、過去に引き戻されて行く。
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