第十四幕 41 『貫く一矢』


 当たらない、当たらない、当たらない!!



 占星術師に対する、私達の苛烈とも言える攻撃。

 その尽くが当たらない。



 私もテオも既にシギルを全開にしている。

 だけど、これは力ではどうすることも出来ないのはもう分かっている。


 ステラが異能の正体を見極めようとしてくれているが、私達も攻撃の手は緩めずに、可能な限り情報を引き出さなければ。



「これならどう!?[陣風龍・改]!!」


「「「[滅雷・散]!!」」」


 [風神招来]で空に舞い上がっていたシフィルが、彼女の切り札である奥義を放つ!!


 そして、ほぼ同時にミーティア、メリエルちゃん、シェラさんの雷撃魔法!!



 風のタクトによって、かつてのそれよりも増しに増した威力となった強烈な竜巻が上空から占星術師に襲いかかる!


 そして同時に、地上三方向から無数の電撃の光線が押し寄せた!!!



 普通であればあまりにもオーバーキルな飽和攻撃。

 これまで以上に回避の余地は無いはず。


 しかし……


 占星術師は無傷。

 どころか微動だにしていなかった。




 この無敵ぶり……


 鉄壁の守備力とか、超スピードの回避とか、驚異的な再生能力とかなら、まだ分かる。

 しかし、明らかにその類ではないし、幻術や空間干渉、精神攻撃でも無さそう。



 果たして、ステラはこれを見破れるのか?




「[六精龍]」



 !!

 占星術師の反撃!!


 これまでも、こっちの攻撃の合間に時折反撃をしてきたが……


 彼女の魔法の発動と共に六種の龍か生み出され、襲いかかってくる!


 [炎龍]、[氷龍]、[雷龍]、[風龍]、[水龍]、[地龍]の六種だ。


 それぞれが仮初めの命と意思を与えられ、こちらの動きに合わせて追尾してくるので、今までの直線的な攻撃よりかなり厄介だ。



 それでも、龍たちの攻撃を掻い潜りながら、占星術師への攻撃は途絶えさせない。

 神界でレベルアップしてなければ、こうは行かなかったかもしれない。



「当たらなければどうということはありませんわ!!せやぁっっ!!」


「はぁーーっっ!!」


 ルシェーラが紙一重で地龍を躱しながら占星術師の足元を大きく薙ぎ払う!


 背後から迫ったテオが、それに合わせて聖剣の斬撃を繰り出す!!



 しかし。

 やはり、ルシェーラとテオの攻撃はやはり当たらない。

 これまで何度も繰り返された結果と変わらず。



 ……いやぁ。

 『当たらなければどうということは無い』と言うのはお互い様だよ、ルシェーラ。




 だけど、このままじゃ埒があかない。

 これまで攻撃をしながら見極めようとしていたけど、全く糸口が掴めない。


 あとはステラが頼りなんだけど……



 と、私が思ったその時……!!





 ピュゥッ!!



 風切り音を立て、銀の光を纏った何かが一直線に占星術師に向かっていった!!



「……っ!!!??」



 !!

 これまでまともな回避行動を取ってなかった占星術師が……!?


 銀光が占星術師を貫くと思われた瞬間、彼女はギリギリで身を捩ってそれを躱した!!



「回避……した?」


「今のは!?」


「ステラ!!」



 あの光の一撃の出処を確認すると、そこには銀の弓で矢を放った直後らしき体勢のステラが……!!



「ステラ!!分かったの!!?」


 私が確認すると、彼女はニッコリ笑って……



「ええ。占星術師の異能は見切ったわ。あとは任せて!!」



 おお!!

 頼もしい!!



「……まさか、私に攻撃を当てうる者がいようとは」


「あなたが自らの可能性を自らの手で選び取るなら。私はあらゆる可能性ごと貫く矢を放つ。……さあ、ここからが本当の勝負よ!!」



 よし!!

 ここからステラのターンだね!!



 彼女を攻撃の軸にして、占星術師を打倒するんだ!!

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