第十三幕 16 『姫騎士』


「は〜い、カティアお姉ちゃんでちゅよ〜」


「あぶ〜!」


「ミーティアお姉ちゃんもいるよ〜!」


「だぁ〜!」



 ……只今、ティアラちゃんを絶賛可愛がり中です!


 おっぱいもたらふく飲んで、今はとってもご機嫌な様子。

 今は私が抱っこしてるんだけど、生まれたばかりの時よりも重くなっている。

 順調に育ってるみたいで、お姉さん嬉しいです。


 もちろん写像魔道具カメラで激写しました。

 記念にお義母さまにも何枚か渡してるよ。



「ん〜……やっぱり可愛いなぁ、赤ちゃん。ね、ミーティア」


「ね〜!」


「だろ?だからあんたたちも早く……」


「いやあ……あはは、私達はまだ……」


 いや、この場にテオがいたら……恥ずかしくて、また固まってしまうところだったよ。

 彼にはイスファハン王子の案内をしてもらってる。

 今はお義母様の滞在する客室で、女性3人だけで歓談中だ。



「それに、今この状況では……」


「中々落ち着いて子作りは出来ない?」


「ぇあ……ま、まあ……」


 いや、まだ結婚もしてないんだけど。

 あと言い方もちょっと……顔が赤くなるのが自分でも分かるよ。



「コホン……と、とにかく。今は世界の平和を守るのが先決です!」


「決戦の時近し……か」


「好き好んで戦いたくは無いですけどね」



 大きな戦争ともなれば、犠牲者も増える。

 今までは最小限に抑えられてきたけど……グラナが本格的な侵攻を開始すれば、果たしてどうなることか。



「ばぁぶぅ〜!」


「うんうん、あなたのためにも頑張るよ」


「ママ!私にも抱っこさせて!」


「はいはい。落とさないように気をつけてね」



 子供たちの未来のためにも……絶対に黒神教や邪神の問題は何とかしないとね。










「さて……私達はそろそろお暇しますね。旅の疲れもあるのにすみませんでした」


「いや、私も話したかったから構わないよ。これから暫く世話になるから、また遊びに来てくれると嬉しいね」



 暫くお義母さまと話をしてると、ティアラちゃんがまた寝始めたのでベッドにそっと寝かせて、私達はお義母さまの部屋を辞すことにした。



「バイバイ、お婆ちゃん!またね!」


「ミーティアちゃんもいつでも遊びに来ておくれ」


「では失礼しました。ごゆっくりお過ごし下さい」















 お義母さまの部屋を出た私は、一度自室に戻ったが……再び来客の報せがあったので迎えに出る。

 今度はデルフィア王国からの使者とのこと。


 どうやら王族の方らしく、もう少しで到着するという先触れがあったみたい。

 お義母さまやイスファハンさんが来た時もそうだったけど……国主である父様が直接出迎えるのは、それこそ同じ国王相手とかくらいみたい。

 さりとて、王族相手に下手な身分の者が出迎えるわけにもいかないので……まぁ、私が適任ってことだ。




 そして城門まで迎えに出ると……ちょうど馬車が入ってくるところだった。

 4頭立てのそれは、流石は王族を乗せるだけのことはあって大きく豪華なものだ。

 護衛の近衛騎士が一声かけてから扉を開き、中から現れたのは……


 騎士の礼装のような豪奢な服装の、淡い金髪と翠玉の様な瞳を持つ……貴公子?


 あれ?

 確か事前に聞いた話によれば……デルフィア王国の使者は第一王女・・だったはず?


 その彼(?)はこちらに気が付くと、つかつかと機敏な動作で歩み寄ってくる。

 その歩き方一つ見ても、相当に訓練された戦士であることが見て取れた。


 私は内心の戸惑いを隠しながら、淑女の礼を取って挨拶をする。


「遠路はるばるデルフィア王国より、ようこそお越しくださいました。私はイスパル国王ユリウスの長女、カティアと申します。皆さまを心から歓迎申し上げます」


 すると、彼(?)はキリッとした表情を和らげて……あ、この方ひょっとして……?


「王女殿下御自らお出迎え頂き、誠に光栄であります。私はデルフィア王国第一王女・・のジークリンデと申します」


 そう言って手を胸の前に置く騎士の礼を取って挨拶してくれた。


 やっぱり、王女様で良かったんだね。

 最初に見た時の印象は、正に貴公子然としていたのだけど……表情を和らげると、途端に優しい雰囲気の美しい女性に見えるのだ。

 髪も一見して短髪かと思ったら後で纏めてるみたいなので、そこそこの長さがあるのだろう。


 つまり、男装の麗人ってわけだ。


 そして、デルフィア王国はリリア姉さんのシギルを受け継ぐ国。

 そう思って見ると、やはりリリア姉さんに似ているな……と思うのだった。

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