第十三幕 15 『サミット』
シェラさんが目を覚ましてから会談開催の日程調整が進んで、いよいよその日取りが決まった。
今回はグラナの情報について大きな進展があるということで、一部の周辺国からも高官がやってくる事になっている。
そのため、シェラさんが目を覚ます以前から水面下での調整は行われていた。
そして、会談の開催予定日を前にして国外からの参加者たちが続々とアクサレナに入る。
中でも身分の高い人は賓客として王城に迎える事になるのだけど……
今、私とテオが出迎えている人物も、その中の一人だ。
「お義母さま!?」
「カティアちゃん、久し振りだね。ふふ、驚いたかい?」
そう。
レーヴェラントから使者としてやってきたのは、なんとお義母さまだったのだ。
もちろん他にも何人か高官を伴ってるけど、まさか出産したばかりで国外に出るとは……
「……母さん、ティアラはどうしたんだ?」
「いるよ。ホラ」
と言って背中を向けると、確かにおんぶ紐で括られたティアラちゃんが……
もう首が座ってるんだ。
どうやら眠っているらしく、顔はお義母さまの背中に押し付けられてるので今は見えない。
後で抱っこさせてもらお。
「全く無茶して……」
「まぁ、あんたの時もこうやっておんぶしながら依頼受けたりしてたし。それに、今回は……ハンネスがそうしろ、って言ったのもある。私としては複雑なんだけど、この娘の事を考えるとね……」
「疎開、ということか」
レーヴェラントはグラナと国境を接するからね。
前回は回避されたけど、もはや戦いは避けられない状況になりつつある。
イスパルが安全かと言われれば、先の王都騒乱事件もあったから何とも言えないのだけど。
「というわけで暫く頼むよ。何なら防衛戦力の一人に数えてもらって構わないよ。カティアちゃんには恩があるしね」
「いえいえ、賓客としておもてなしさせてもらいますよ。ごゆっくりお過ごしください」
「大人しくしてろよ、母さん」
そして、顔見知りは他にも。
「イスファハン様もいらっしゃったのですね」
「ああ、フェレーネ様と一緒にな。カカロニア本国よりも近いし、面識もあるから……って事で。部隊は部下に任せてきた」
カカロニアはイスパルの隣国だけど、王都から来るとなると確かに少し遠いね。
「しかし……グラナの姫さんが亡命してたなんてなぁ……。信頼はできるんだよな?」
「ええ。それは私が保証します。平和を望む優しい方です」
「そうか。カティア姫の見立てなら心配要らないな」
そう言ってくれるのは嬉しいのだけど、何とも面映ゆい。
「グラナの姫もそうだけど……魔軍襲来の時に助けてくれた、あのシェラって魔族も会談に参加するんだよね?」
「ええ、お義母さま。先日の王都の戦いで負傷されて、王城で療養していただいてましたが……今は完治されてます」
「そうかい。あの時はまともに礼も言えなかったからね……出来れば直接会いたいんだけど?」
「でしたら後でご案内しますよ。取り敢えず今は客室に……」
と言いかけたところで、ティアラちゃんがむずかりだした。
「ふぇ……」
「おっと。お〜、よしよし……起きちゃったね。そろそろお腹が空いたかな?」
寝て、泣いて、おっぱい飲んで、また寝て。
それが赤ちゃんのお仕事だからね。
「じゃあ急いで部屋に案内しましょう」
泣き出したティアラちゃんを皆であやしながら、お義母さま達を客室へと案内するのだった。
今回の会談では、レーヴェラント、カカロニアの他にも国外からやって来る。
私のお披露目パーティーの時にも来てくれたウィラーやアスティカントからは政府高官が。
アダレットはステラが代表として参加するらしい。
その他、グラナと国境を接するデルフィア王国(ウィラーの北隣)と、シャスラハ王国(レーヴェラントとカカロニアの隣国)からも王族や高官がやって来る。
デルフィアはリリア姉さんの、シャスラハはシェラフィーナ様の
そのほかの国も、遠方のため王族や政府高官が来ることはないものの、事務方レベルの人員はかなりの人数がやって来る事になっている。
その規模からすれば……【俺】の前世で言うところの
そして、数日後にはいよいよ会談が開催される運びとなるのである。
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